蒼き流星SPTレイズナー 第14話『異星人に囚われて』

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※ネタバレに加えて、批判的な内容も多くなっています。

 

 

 

 

ダニー少佐の犠牲により逃走を再開することが出来たエイジ達ですが、追跡してくるゲイルが逃がしてくれるはずもありません。

バルディとベイブルはシャトルにエネルギーを転用したため機動出来ず、エイジが単独で迎撃に出ます。ゲイルは隊形を維持して待機するように命じますが、カルラが単独で突出してレイズナーに攻撃を仕掛けます。レイズナーを軽く翻弄し、レーザードガンを弾き飛ばしてコクピットをロックオンします。(カルラは普通に主人公であるエイジに勝ってしまっています。これまでもそうでしたが、カルラはSPTパイロットとしても非常に優秀な存在であると表現されています。)

後は引き金を引くだけでエイジは死ぬ……はずでしたが、ゲイルがカルラのディマージュのレーザードガンを撃ち落としてエイジを助けます。まぁ、上官であるゲイルが部下であるカルラに攻撃はするなと命じて、その部下が命令を無視したので上官であるゲイルが制止するのは当然なのかもしれませんが、前回に引き続いてエイジ達を殺せる決定的なチャンスを上官によって封じられてしまったカルラ。失望と怒りが入り混じったような表情を見せており、ひたすらに不憫です。

 

もはや一切の抵抗力を失い、どうすることも出来なくなったエイジは、シャトルの仲間の身の安全と引き換えに投降を決意します。しかし、そうなると収まらないのがデビッドです。エイジに詰め寄り、お前がやらないなら俺が戦うと宣言します。デビッドにすればこれまで数えきれないほどの地球人がグラドス人によって一方的に虐殺されてきた現場を目撃してきたのですから、ここで投降したところで身の安全の保障など一切されていないはずであり、徹底抗戦すべきと思っているのでしょう。

が、ここでシモーヌが再び印象的な一言を

 

「人生には白旗が必要な時がある。しかし、その白旗は反撃に備えるための一つの手段に過ぎない。」

 

これはシモーヌの父親がよく言っていた言葉だそうですが、こんな教訓めいた言葉が日常的に交わされるとはやっぱりええとこの子でしょう、笑。(そのシモーヌの言葉に対してシェイクスピアか何か?とツッコむアーサーもやっぱりええとこの子でしょうね。)とはいえここで抵抗を続ければ100%殺されるのは確実、投降すれば何らかのチャンスが生まれるかもしれません。

 

そしてゲイルの母艦に連行された一行ですが、ここからが面白い。地球人一行は初めて『敵』であるグラドス人と接触しますが、それはグラドス人にとっても同じこと。グラドスの若いと思われる兵士が興味深そうに地球人たちを眺め、アンナやアーサーが移動用のリフトが上手く掴めないでいると手を取ってリフトに掴まらせてあげたりしています。(別に乱暴にでもありません。この若い兵士は、みんなはサルだとか何とか言うけど、地球人って俺たちと同じなんだなぁ…とでも思っているのでしょうか。)

こういう異文化、異文明交流というのはやっぱり面白いですね。別に話をしたりはしていないんですよ、ただお互い顔が見える距離で眺め合っているだけ。それだけで互いが『人間』であることに初めて気がつく。これが重要なんですね。

 

別室からエイジ達が連行するのを眺めているゲイルとカルラ。明らかにカルラの物の言い方が固く、ゲイルに腹を立てているのが伝わってきます。ゲイルはグレスコが言った『地球人を殲滅しろ。』という命令は無力化させればいいのであって、捕虜にしたのは殲滅したのと同じだと過大解釈としか思えない発言をカルラにしています。

思い出してほしいのですが、ゲイルは第2話でエイジの討伐をグレスコから命じられていながら、『説得も処分の一種だと受け取りました。』と過大解釈して、その結果指揮権を剥奪され、ゴステロの登場となって国連職員の虐殺やガステン、ロベリアの私刑に繋がっていたのです。創作の内容にたられば言っても無意味ですが、ゲイルが最初からエイジを本気で処刑もしくは捕虜にしていれば、ゴステロの暴走も無かったのかもしれないのですが(まぁ早かれ遅かれゴステロは同じことをやったと思いますが)、ここに来ても同じようなことを繰り返しているゲイルって何なんでしょうか?

 

エイジだけはゲイルの別室に呼ばれ、やっと先輩・後輩の間柄に戻り、本音で話をします。と、その隙にカルラは独断でグレスコの副官であるズールに連絡を取り、捕虜の処分について指示を受けます。部下が直属の上官を通さず、そのまた上官に直接報告をするなど軍隊の命令系統上あってはなりませんが、カルラにしたらゲイルに対する不信が極まっているし、ゲイルが言っていることが本当に正しい命令なのか確かめたい気持ちもあるのでしょう。

と、そこにゲイルが入ってきてバツの悪い思いをするカルラですが、ズールから捕虜は『処刑』せよ、それはグレスコ閣下の命令であるという指示を引き出し、それをゲイルも聞きます。カルラにすればズールから捕虜を処刑せよ、との言質をとってゲイルに突きつけるのが目的でもあったのでしょう。

通信が終わった後にゲイルに捕虜を処刑する命令を出すよう詰め寄るカルラですが、ゲイルは『黙れ』の一言でカルラを下がらせます。

えーっとですね、ここまで見てきてゲイルに色々問題はあります。それは上官(つまりグレスコ)の命令を過大解釈もしくは無視していることも問題ではあるのですが、もっと問題なのはそれを部下(つまりカルラ)に見せてしまっているということだと思います。

部下(カルラ)にすれば直属の上官(ゲイル)の指示にだけしたがっておけばよく、上官の上官(グレスコやズール)の意向は気にしなくてもよいのですが(もし何かあっても直属の上官であるゲイルが責任を取るのだから)、そうだとしても上級者の命令を直属の上官が無視して、その無視された命令に自分が従わせられているというのは、カルラにしてみたら不安ですし、不信感を抱くのに十分でしょう。おまけに直属の上官であるゲイルは作戦に明らかに私情を挟んでいるのであり、地球人を抹殺するという大方針を妨害してくるのですから、本当にゲイルって何なの?と思わざる得ません。

カルラにしたらこのままゲイルの指示に従っていれば、重大な命令違反に加担したことになるかもしれません。部下にそんなことを考えさせている時点でゲイルは指揮官としてダメだろうと思います。もし地球の武装勢力への攻撃はするが、エイジや民間人達は保護したいという方針を貫き通すなら、カルラに対してはそれがグレスコの命令であるとハッキリ言い切ってその嘘が露見しないよう最大限配慮するというのが、上官であるゲイルのやることでしょう。それをせずグレスコの命令には従いません、部下であるお前(カルラ)は俺の言う事に従っておけ、で済まさせようとするゲイルって……

カルラがズールに直接報告したという越権行為は上記の様なカルラの不安といらだちゆえのことであり、私は止むを得ない行為だと思います。

 

と場面は代わって監禁されているエリザベス達。アーサーが急な腹痛で苦しみだし、それで扉を開けてもらおうというベタにも程がある作戦が決行されますが、当然そんなものが通用することなく見張りのグラドス兵には失笑されつつ無視されます。重苦しいゲイルとカルラのやり取りからしょーもないアーサーの作戦も並行されているバランス感覚が今回は面白いです。それにしても「おっかしいなぁ、テレビじゃ必ず成功していたんだけど。」というアーサーの台詞も笑いを誘います、これがまさしくテレビなんですけどね、笑。

と、アーサーのおかげでほんわかしている一同の基にカルラがやって来て部屋から出て移動するよう命じます。明らかに不穏な状態ですが、やっぱりというべきか、カルラは一同を宇宙空間と繋がる気密室前に連行し、全員気密室に入るように命じます。ついにカルラは強硬手段に出て、ゲイルに無断で地球人の処刑を決意したようです。

当然、そんなことに従えないエイジ達はヘルメットを投げつけたり、アーサーが手に取ったマシンガンを乱射したりと現場が大混乱になったすきにエイジがカルラに銃を突き付けて人質にとります。(細かいことを言えば拘束せずに連行しているからこんなことになるのだが、まぁそこは作劇上しかたないでしょう。主人公達が敵に掴まるというのはお約束ですが、逃げてもらわなければ話がそこで終わってしまうのですから。)

なぜかエイジが脅しでカルラの顔をかすめて発砲した時のカルラの顔がギャグっぽくなっているのもクスっときます。

脱出しようとするエイジ達の基に大勢のグラドス兵、そしてゲイルが駆けつけてきます。そしてゲイルはエイジに対し、今までお前の処分をためらっていたのはお前のことが好きだったからだと、白状します。……完全に作戦に私情を挟んでいたことを大勢の部下の前で言っちゃってますけどいいのか、ゲイルそれで?

そしてゲイルはお前と俺の絆はこれで切れたと宣言します。つまりこれからは敵同士だと…

で、不憫続きのカルラですが最後にエイジ達によって宇宙空間に放り投げられて、ゲイルが回収するまでの時間稼ぎに使われます。最後までこんなのばっかだな、この人…

ゲイルの母艦からエネルギーも頂戴して再び逃走を開始するエイジ達。(細かいことをいうならシャトルの起動装置やベイブル、バルディを稼働可能なまま放置しているのもグラドス側は迂闊過ぎると思いますが、これも作劇上仕方ないでしょう。)

 

ゲイルに対して批判的な内容になってしまいましたが、でもゲイルの行動ってちょっと目に余ると思います。だってカルラは上位の命令と直属の上司の命令の板挟みになっているわけで、部下をそんな状況にさせる上司ってどうなのよ…と思わずにいられません。