蒼き流星SPTレイズナー 第16話『月よ!こたえて』


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ゲイルの追撃隊を退け、月へと急ぐエイジ一行ですが、何故か月面の米ソどちらの基地も通信に返答がありません。トライポッドシャトルが地球の船でないということは、事前に通告が出来なければ攻撃を受けてしまうことは確実なのですが。といって、ここまで話を見てきた以上、米ソ両基地から返信が無い理由は想像がつきますが…

 

場面は代わってゲイル亡き後のグラドス艦のブリッジ。カルラがズール副官にゲイルが戦死したことを報告し、合わせて仇を討つためにも月へと向かうことの許可を求めますが、ズールは既に作戦は進行中であり、すぐに帰還せよとカルラの申し出を却下します。ならばせめてゲイルの遺骸を回収する時間を与えて欲しいと訴えますが、それすら却下されてしまいます。

愛する人の亡骸を葬ることすら許されないカルラ、思わず涙が溢れがっくりと肩を落とします。ゲイルが亡くなってからもこの不憫さ、ここまでくるとスタッフの方々も明らかに狙って不憫な状況にしているんだろうなぁと思います。とはいえ彼女の不憫街道はまだまだ続くのですが……それにしてもカルラはこういう非情な命令に不満を持ちつつもきちんと撤退の命令に従っています。カルラと同級者であったロベリアも非戦闘員の殺害という行為に苦しみながらも命令に従っていました。

カルラもロベリアも命令への服従という軍隊の(というか組織の)基本に対し内心抵抗しながらも自我を押し殺して従っていました。それだというのに彼らの上司ときたら……

 

再び場面はエイジ達シャトルの内部へ。結局月着陸の直前になっても米ソ基地どちらからも反応がありません。やむを得ずエリザベスは通告無しで月面着陸を決意します。

それにしてもここでの会話シーンでドクター・エリザベスがこの一行の精神的支柱であることがよく伝わってきます。戦いや逃走だけならエイジを中心に進めて行けばよいでしょうが、ここからは地球へ帰還するための細かな調整が必要になってきます。そのためには国連職員であるエリザベスの存在は何よりも大きいでしょう。

とはいえ、通告無しで月面に着陸することへの不安が解消されたわけではありません、男性陣は大丈夫かなぁと不安がりますが、そこにシモーヌが、月は火星と違って三万人もの地球人が住んでいるのだから前向きに考えようと発言します。皆それもそうだと思い、月についたら美味しいものを食べよう、なら皆で良く行ったステーキハウスに行こう…等々、イヤな予感がプンプンする会話を振りまきます、笑

結局、心配していた米ソ基地からの攻撃も受けず、無事に月面に着陸出来たのですが、それもそのはず。予想通りというかなんというか、月面の全ての施設は壊滅していました。ついにグラドスの侵攻は月まで及んでいたのでした。

 

衝撃を受ける一同でしたが、情報収集のため、そして生存者の確認のためエイジとデビッドがSPTで探索に出かけます。地下タウンを探索するレイズナーとベイブル、とそこに謎の人影が。レイズナーとベイブルは自然の景色を投影した公園のような場所に出ます。噴水があったり、クレープの屋台の残骸が転がっていたりと火星と比べて地球の環境に近く設計されていることが分かります。それだけに破壊されていることへの無常観が漂うのですが…

それにしても今話はレイズナーとベイブルがアップになった際の作画が素晴らしいですね。機械の硬質感と滑らかさがよく表現されています。

 

通路の突当たりまで出てきたレイズナーとベイブル。と、正面の壁に地球の戦闘機が機首から突き刺さってこちらに向いているのを見かけます。グラドス軍の攻撃により破壊されたのだろうと思っていると、何故か機首の機関砲が動き出し……その機関砲、そして歩兵(?)の自動小銃やロケットランチャーの一斉攻撃が始まりました。

しかし、その歩兵(?)達は一人を除いて何故か皆、背格好が小さな者ばかりであり、唯一背の大きな人間も何故か眼帯をしており、眼が見えないようです。

そうこうするうちに背格好が小さな者たちは武器を捨てて逃げ出してしまいました。眼帯をしている男は踏みとどまって戦うよう命じますが、やはり眼が見えないようで明後日の方向に銃を乱射しています。

デビッドは生存者を発見したこと、そのうちの1人は負傷していることをエリザベスに報告しますが、このシーンのデビッドが実に簡潔明瞭にエリザベスに事実を伝えており、地味ながらデビッドの成長がよく分かる良いシーンだと思います。エリザベスも怪我人と聞いちゃあ黙ってられねぇ、とばかりにデビッド達の基に向かいます。(忘れがちですが、エリザベスの本業は医者なのだ。)

デビッドはベイブルから降りて謎の集団と対面しますが、そこにいたのは眼を負傷したアメリカ軍人と8人の子供たちでした。(デビッド達よりさらに年下、小学生低学年程度に見える)子供たちは異星人だと名乗るエイジを見て、映画と全然違うし、そんなの嘘だと実に子供らしい会話を繰り広げ、これまでとは違う空気を造りだしてくれます。

と、そこにエリザベスが駆けつけてきますが、なぜかアメリカ軍人を見ると衝撃を受けて近寄ってきます。

このアメリカ軍人の名前はクレイトン。エリザベスとクレイトンの間には過去色々とあったことが二人の会話から察せられます。(要するに元カレと元カノなんですね。)

とはいえ今でも二人の関係が冷え切っているわけではないようですが(なんたってヘルメット+眼帯をしていても一発でクレイトンだと見抜くくらいですから)、出会うなり二人はお互いのちょっとした物の言い方で衝突しています。ここがとても良くて、二人の関係は不仲というよりすれ違っている、といった感じが伝わってきます。

と、そんな彼らの基にこれまで見たことがない不気味なSPTが接近してきます。この時点で今まで登場したブレイバーやディマージュ、ドトール等とは明らかに異質な雰囲気を感じる機体です。

クレイトンは子供たちに再び武器を獲って配置につくよう命じますが、これにエリザベスが抗議してまた口論になります。エリザベスにしたら子供に武器を持たせるなんてとんでもないことなのでしょうが、それを言ったらエリザベスもエイジ達に武器を持たせて守ってもらっているのですが…(最もエイジ達は10代の後半であり、ギリギリ大人と言えないこともないので、訳が違うのでしょうが。)

 

 

余談…ゲイル編(?)が終わって、新たな月面編がスタートしましたが、また一気に話が動き出したように感じます。特にクレイトンと8人の子供たちの存在が物語に新鮮な風を送り込んでくれています。これまでもビルたち国連職員やダニー少佐など地球の大人たちがメンバーに絡んでいましたが、クレイトンはエリザベスと因縁浅からぬ関係という新たな要素があり、そこからも目が離せません。やはり良い脇役というのは物語に絶対に必要だと思います。