蒼き流星SPTレイズナー 第24話『光になったエイジ』

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ついにグラドス艦隊に向けて決死の出撃を開始するアーサー達、エイジもそこに合流します。さらに世界各国の残存兵力が、エイジ達の護衛の為に駆けつけるに及んで一気に士気が高まります。もしかして勝てるかもしれない……そんな希望が僅かながらも生まれてきました。

エイジはアンナまでシャトルに乗り込んでいることに驚きます。(実際アンナはシャトルの操縦や戦闘にほぼ関わっていないですからね。)これに対し、シモーヌ

 

「私達は火星以来、自分達のことは自分達で決めてきたわ。今度もそうよ。」

 

と、力強く宣言します。これなんですよね、レイズナーという作品に貫かれている精神は。想像を絶する困難に遭遇した少年少女たちが、それでも諦めることなく故郷に帰るために最善を尽くす。誰一人として他人の脚を引っ張る様なこともせず、全員が己の責任を果たそうとしています。こういった自主独立の精神が貫かれていることが、レイズナーという作品に快い緊張感を産み出しているのだと思います。そういう意味ではCCCのメンバーは全員、子供ではなく大人なんですよ。大人と子供の区別は決して年齢の上下ではなく、己の行動に責任がとれれば、それで大人なのだと思います。(それを考えるとゴステロなんかは完全に子供ですね、何一つ自分のやったことに責任を取ろうとしなかったのだから。)

 

いよいよグレスコ艦隊に突入というタイミングとなり、護衛の各国の戦闘機パイロット達からエイジ達は励ましの言葉を掛けられます。一瞬ではありますが、人類の団結を感じさせる暖かい雰囲気に包まれます。そしてグラドスのSPT隊と地球の戦闘機隊が、会敵し交戦となります。今回は地球側も意地を見せ、それなりに善戦しますが、やはりというべきかグラドス軍にはかなわず、次々と撃墜されていきます。

地球人たちが自分らを守るために次々斃れていくのに耐えきれなくなったデビッド達はSPTに乗り込んで出撃しようとします。もはやエイジ・デビッド・ロアンの三名に死地に向かう迷いはありません。

 

しかし、ここでシモーヌが涙ながらにエイジ達を引き留めます。彼女にすればわずかな希望にすがってここまで来たものの厳しい現実を突き付けられ、破滅は避けられないことに気がついたのでしょう。ここまで斜に構えたような皮肉な言動を取り続けてきたシモーヌですが、今度ばかりは感情を爆発させて泣き叫びます。ましてこのままでは自分が愛する人が永遠に去ってしまうかもしれないのです。大国間の歪な軍拡競争、そしてグラドスという異星の侵略主義の果てに自分達が何故、死ななければならないのか、これまでの戦いは降りかかる火の粉を払うことで精一杯でしたが、今こうして『政治』というものに直面してみるとその理不尽さに絶望的な想いを抱いているのでしょう。

 

しかし、シモーヌの荒れ狂う感情を沈めたのはデビッドの強引な口づけでした。そして「俺はお前が好きだ。」という愛の言葉。(高橋監督作品でこういう直接的な愛情表現が出てくるのは珍しい。)デビッドもまたこの世に悔いを残したくないのでしょう。

それにデビッドの行為を見たアーサーはガックリと肩を落とします。自分もシモーヌに気があったとはいえ、デビッドと比べると気迫が違ったということで諦めがついたのでしょう、笑。しかし、そんなアーサーも出撃するロアンに対しては

「ロアン死ぬんじゃないぞ!生きてみんなでもう一度会うんだから!僕らは死んじゃいけないんだ!」

と熱い激励の言葉を送ります。物語の最初から凸凹コンビのような関係だった二人ですが、固い絆が生まれていることが分かります。そしてこの絆は第二部にも引き継がれます。

 

デビッドとロアンはSPTに乗り込み、シャトルにはエイジだけが残されました。そしてエイジも出撃というタイミングになって思わずシモーヌはエイジに駆け寄ろうとしますが、それより一瞬早くアンナがエイジに駆け寄ります。そして前話の最後で摘んでいたヒナギクの花をエイジに手渡します。この演出はニクイというべきか、第一話でアンナは国連職員のビルから火星で育った一輪のバラの花を貰いましたが、そのバラはグラドスの暴力によって無惨に散りました。しかし、今になってアンナは地球に咲く花を異星人の少年に手渡しました。バラとヒナギクという花によってこの作品は一つの繋がりが出来ているのです。こういう描写があるかどうかで、作品の緊張感も変わってくると思います。

そしてシモーヌは結局、アンナに先を越された形になってしまい、エイジに自分の想いを伝えることができませんでした。うな垂れるシモーヌ、そして彼女に優しく寄り添うエリザベス。

 

シャトルから飛び出し、戦闘に突入するエイジ達。デビッドもロアンも奮戦し、デビッドはソロコムを中破させ、ロアンは単独でソロコムを撃墜させます。無人機であるTSスカルガンナーを除けば、今回初めてロアンはSPTを撃破しました。デビッドに関しては中破が最高の戦果となりました。元が素人の少年であるデビッドとロアンにすればこれが考えられる最高の成果になるのでしょう。(ちなみにロアンがソロコムを撃墜させた際、ソロコムのパイロットは脱出しており、殺人を犯していないことが印象付けられています。)

しかし、その代償は大きくロアンのバルディも大きく破損し、戦闘継続が不可能となります。ギウラを含むSPT隊は全て撃退し、何とか第一波攻撃はしのぎ切ります。(それにしてもほぼエイジ単独で、しかもV-MAXを使わずにギウラ隊を撃破しており、さすがにエイジが強すぎる気もしますが…)

第二派の攻撃となればもうデビッドとロアンは撃破されるのを待つだけです。二人を死なせるわけにいかないエイジは、デビッドにロアンを介助してシャトルに収容するよう伝えるとそのまま、V-MAXを発動させグレスコの母艦を目指して突撃します。まさしく『光となった』エイジ。

残された可能性としてはグレスコの母艦を破壊し、グレスコ以下の首脳陣を殺害することくらいでしょう。いや、例えそれが出来ようとグラドス軍の主戦力は残ったままであり、新しい指揮官が赴任してくるだけなのかもしれません。しかし、エイジは一縷の望みに全てを託し、光となって突入します。

 

「行くぞレイ!地球を守る僕の戦いは今始まるんだ!」

 

そして光に包まれる宇宙。エイジは、そして地球の命運は…

 

 

レイズナー第一部、完。