蒼き流星SPTレイズナー 第23話『奇跡を求めて』

www.b-ch.com

 

地球へ降下しつつ、ジュリアらの追撃隊を振り切ろうとするエイジ。何とかジュリアを説得しようとしますが、ジュリアは戸惑いは見せつつも攻撃は止めず、レイズナーとブラッディカイザルは揉み合いになります。

ジュリアの監視を任されているギウラは部下にジュリアごとエイジを攻撃して二人まとめて殺害することを命じます。ギウラ曰く「グレスコ閣下は仰られた、あらゆる手段を使ってもレイズナーを破壊せよ、と…」だそうですが、前回も述べましたが、グレスコもそこまでレイズナーを危険視しているなら、ゲイル戦死後に何でエイジ達を放置したのか謎です。(グラドスの技術が地球に渡るくらいなら見逃せるが、グラドス創生の秘密が暴露されるとなると話は別だ、ということなのかもしれませんが…でも、前回も述べた様にグラドス創生の秘密ってそこまで隠すような説得力に欠けるんですよねぇ。)

しかも、エイジをジュリアごと殺すという判断ですが、いや~それだったら、ジュリアをわざわざワープ装置まで使って呼びだした意味が無いと思うのですが…これは前回も述べましたが、何故かジュリアはゲイル級のSPT操縦の腕前を持っているようですが、そんなエース級パイロットを使い捨てにする必要性も感じられませんし、ブラッディカイザルってかなりの高性能機のはずですから、勿体ないにも程があります。こんな扱いをするくらいなら、まだ当初ジュリアが思っていたようにエイジに対する説得をさせた方が、余程効果的だったと思うのですが…

正直なところジュリア関連の要素は、シナリオの整合性よりも『エイジとその姉を戦わせたら話が盛り上がりそうだから。』というテコ入れ感が強くて鼻につきますね。ここまでとても丁寧に話を進めておきながら、これはちょっと残念に思います。

 

それはそうとブラッディカイザルは撃墜され、ジュリアは海の底に沈んでいきます。エイジはV-MAXを発動させ、ギウラら追撃隊を蹴散らします。(この時、久々にSPTの脱出装置が見られます。)

このV-MAXですが、ロボットアニメにおいて非常に革新的であり、カッコいいギミックだと思うのですが、同時に諸刃の剣でもあると思います。現時点においてはV-MAXはグラドス側にも無い技術で、これを使えば初見の相手ならまず反応不可能であり、一方的に攻撃することが出来ます。しかし、これは例えるなら水戸黄門の印籠みたいなものでピンチになっても『印籠=V-MAX』を見せればどうにかなる、ということであり、話がワンパターンになってしまう危険性もありますので、乱発できるものでは無いなと思います。第二部ではそこの対策も色々とあるようですので楽しみですね。

 

舞台は移り、グラドス側では地球侵攻の最終段階に突入し、地球側は迎撃のために世界各国が協力した艦隊が出撃します。呼び戻されたCCCのメンバーはただ事の成り行きを眺める事しかできません。視聴者としてもこれまで何度も地球艦隊がグラドスの攻撃で壊滅してきているのを観ているので不安しかありません。しかも、これまで地球側が戦ったグラドス軍は、先遣隊ともいうべき小規模な勢力でしかありませんでしたが、それでも地球側はほとんど抵抗も出来ず壊滅し続けてきました。それが今回は、グラドス軍の大艦隊が相手なのですから、もはや絶望的としか言えません。

 

嫌な予想は的中し(本当に嫌な予想がそのままになるアニメだ…)、地球の大艦隊は何ら成果もあげられず壊滅します。もはや地球人に残された兵器はただ一つ、人間にとって禁じ手ともいえる核兵器しかありません。地球への被爆の危険性も含みつつ、大量の核ミサイルが地球から、グラドス艦隊に向けて発射されます………が、やはりというべきか、全ての核ミサイルはグラドス艦隊に届く前に迎撃されてしまいます。

艦隊は壊滅し、地球人にとって究極の兵器ともいえる核ミサイルですら何の効果もありませんでした。わかってはいましたが、科学レベルが違い過ぎて抵抗するしない以前の問題でしかありません。

事ここに至ってはもはや白旗を挙げて降伏するしかありません。しかし、まだたった一つだけ、残された可能性があります。それこそがエイジ達が持ち込んだグラドス製兵器なのですが、当然それを動かせるのはエイジとCCCのメンバーしかいません。

とはいえ、エイジもアーサー達も地球到着後、同じ地球人から不愉快な目に合い続けてきました。それでありながら、今になって助けを求めるとはあまりにも都合が良いとしか言えません。しかし、大統領が直々にエリザベス達に連絡し助けを求めてきます。(この時、電話の相手が大統領だと知らないデビッドが、そうと知った瞬間直立不動になっているところにデビッドもまた育ちが良いところを感じます、笑。)

 

しかし、大統領から頼まれたとはいえアーサー達はグラドスがいかに強大な相手なのか地球の誰よりも良く知っています。それと戦えなど、地球の為に死ねと言われているのと同じなのですから、当然全員悩みます。この時、全員の心に去来しているのは未だ行方不明のエイジの事です。エイジはたった一人で全てを捨てて、もう一つの故郷、地球の為に犠牲になり続けてくれました。今こそ、エイジが守ろうとした地球の為に自分たち地球人が立ち上がるべきなのでは……それに彼らは一人ではありません。火星に降り立ったその日から苦楽を共にし、硬い絆で結ばれた仲間がいます。

アーサー、デビッド、ロアン、シモーヌ、エリザベス、アンナ。6名は最後の希望にかけてグラドスと戦うことを決意します。第一話からそうでしたが、エイジを含めたこの7名は本当に良くやっています。絶望的な状況の中で全員が最善の策を探り、生への可能性を追い続けてきました。こういう作品だとよく足を引っ張るキャラやそうでなくても無能な働き者系のキャラが出てきがちですが、彼らはそういう事も無く、一人一人が自らの責任において最善を尽くしています。このレイズナーというアニメはロボットアニメというジャンルではありますが、本質的には少年少女が、生き残るための努力をする、その姿を観るという作品であると思います。

 

出撃前、アンナは空港の片隅に咲く花に語り掛けます。そしてその花を一輪だけ貰うと戦いの場に連れて行きます。このシーンはおっ!っと思いましたね。思い返せば、このレイズナーというアニメはアンナが国連職員のビルから一輪の花を受け取った瞬間からスタートしました。アンナがビルから受け取った花は理不尽な暴力により無惨に散りましたが、最終局面を迎えた今話においてアンナは再び一輪の花を手にします。

この一輪の花が何を意味するのか、再び絶望の始まりであるのか、それとも希望であるのか、アンナが手にしたヒナギクは当然何も答えてくれません。

ただ、人間がヒナギクに託した想い―――花言葉『平和』と『希望』であることだけ記しておきます。