とんでもなく個性的なコンビニ『立山サンダーバード』

 

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え~この度、天外魔境のはまぐり姫の舞台巡りとして富山県立山町の尖山に登ったのですが、尖山登山については後日、詳細な記録をアップさせていただきますし、次に作成する同人誌にも収録したいと考えています。

富山を訪れたのは尖山が、第一目標ではあったのですが、もう一つ楽しみにしていた場所として今回紹介したいところがあります。

それがコンビニ立山サンダーバードです。ネットの情報からでもかなーり個性的なコンビニであることが伝わってきましたので、尖山登山と一緒に訪れました。

 

外観は普通のコンビニだが…



 

と、その前にですがコンビニ(コンビニエンスストア)というのは便利なものです。今や単なる商店というのに留まらず、小さなデパート、小さな役所といってもよい程の広範多岐に渡るサービスが受けられます。

この便利さは「普遍性」という概念に支えられているかと思います。つまり、全国どこに行ってもコンビニがある限り同じサービスが受けられるということですね。

しかし、『どこに行っても同じ』というのは安心ですし、便利ではありますが、その反面『つまらなさ』や『刺激の無さ』につながることでもあります。

今のコンビニはほぼセブンイレブン、ローソン、ファミリーマートの三つに統合されているように思いますが、二十年くらい前まではバラエティに富んだコンビニが色々とありました。

たとえば「ポプラ」なら弁当のご飯が炊きたて、「サークルK」なら肉まん、なぜかレア感があってそれ自体に魅力があった「am/pm」……と各コンビニで特徴を出していたように感じます。

無論、コンビニというのは便利で普遍的であることが目的でありますから(そもそもコンビニエンスという言葉自体が、便利を意味します)、普遍的な上記の三つに統合されることは自然ですらあります。

ただ、前述したようにどこに行っても一緒、というのはどこか寂しさがあるのも事実なわけです。(このヘンの問題は司馬遼太郎が、文明と文化という観点から論じていましたね。)

 

 

 

 

そこへいくと今回紹介する立山サンダーバードは普遍性の真逆を行く『特殊性』、『文化性』だけで突っ切っているような激烈な刺激がありました。それではご紹介~

まずはJR富山駅に隣接する富山地方鉄道電鉄富山駅から乗車。

それにしても電鉄富山駅の駅員が異様に若くて(どうみても十代にしか見えない)、一瞬「学生の職場体験?」と思ったのですが、たぶん新入社員なんでしょうね。(実際、切符の受け渡しや対応でちょっと混乱していた)

そして電車に50分程揺られて目的地である横江駅へ……揺られてと書きましたが、富山地方電鉄は実際かなり揺れます!うちの地元の路線も結構揺れるのですが、ここの鉄道はその上をいくレベルの揺れっぷり!(スマホをつついていると歩きスマホ禁止システムが作動するレベル)

 

小屋みたいだが、これが駅舎

 

横江駅を降りて駅舎(という名の小屋)を出ると左折します。そして50メートルほど歩くとすぐにお目当ての立山サンダーバードがありました。

観ての通り外観はまぁ、普通のコンビニっぽいんですよね。しかしそんな中でも左手に見えるキリンの力水しか売っていない自動販売機がなんらかのオーラを発しています。

 

そしていよいよ入店。とその前にサンダーバード店内は写真撮影が禁止されており、その旨を示す注意書きが至る所に掲示されていました。

これはいかに買い物をせずに写真だけを撮る人が多かったであろうことを想像させます。商店なんだから、きちんと買い物をしましょう。

例外的に写真撮影が許可されていたのが、マーケティングマップとでも言いますか、どこから来たのか教えてね!地図です。

 

コストがかからないというのは素晴らしいことだ。



 

紙の地図に自分でシールを貼るという原始的手法に安心感すら覚えてしまいますね。いや、実際こういう方法って直感的に分かりやすいですし、金もかからないし、停電とも無縁ですから強いと思いますよ。

それにしても我が地元からはあまり訪れていないようですね。がんばれ!〇山県人!

買ったものしか写真が無いので語りにくいですが、店内は非常に個性的です。私は煙草を吸いませんが、煙草の品揃えも凄くて愛煙家にとってはそれだけで行く価値があるのではないでしょうか。

 

そして店内には立山サンダーバードのオリジナルグッズである、バッジ、ステッカー、Tシャツ、バッグなども多数販売されていました。どうもデザインもお店の方がしているようでしてこれぞまさしくオリジナルというやつでしょう。

私が買ったのはこのバッジなのですが、なんというか手作りの味があると思いません?ちなみにデザイナー料がかかっていないから安いと思われるかもしれませんが、まぁまぁいい値段がしました、笑。(でも、完全オリジナルだからこそ自由な値段が付けられるとも言えますからね。)

 

普通に良いデザインだと思う

 

そしてコンビニといえばやっぱり楽しみは食べ物ですね。食べ物に関してもこの立山サンダーバードはスゴイですよ。

私が買ったおにぎりはこれです!

 

う さ ぎ

 

どうです、セブンやファミマでうさぎが売ってたらビビるでしょ?でもそれが普通にあるのが、この立山サンダーバードなんです。ちなみに他にも熊、馬、サメとかもありましたね。近年、ジビエというのが注目されていますが、その究極系なんじゃないでしょうか。

ちなみにこのうさぎのおにぎりですが、尖山の山頂で食べましたが、味の方はほぼ鶏肉もしくはシーチキンでした。それでいて値段は普通のおにぎりの三倍くらいするという…(ごく普通の梅干しにぎりとかも売っています。)

たしか熊に関しては800円くらいしたような。話のネタにするにはいいかもしれませんが、食料にするなら普通のおにぎりにした方が良いと思います。

あとお茶もここで買っていきましたが、ペットボトル飲料に関してはやや割高になっていますので気になる人は富山で買っておいた方がいいですね。

 

さて、「とがりやまのうえでおにぎりを~(語呂わるっ)」というノリで登山を終えて下山すると丁度12時頃になり、食べたのがおにぎりとチョコレートだけだったので、もう一度サンダーバードに寄って昼食を買いました。

おにぎりは食べたということで今度はサンドウィッチにしました。先程、変わり種を選んで微妙な思いをしたので今回は確実に美味いだろうというヤツを選びました。

 

食べ物の名前とは思えない



 

で、買ったのがこれです。『大仏』です。は?と思われるかもしれませんが、大仏を思わせるほどボリュームのあるコロッケサンドのことだそうです。

食べてみると確かにボリュームたっぷりで味も良く、大満足でした。

ちなみに炭酸飲料の品揃えもかなり独特で初めて見るような物が多かったです。餃子サイダーなる商品もありまして一瞬、心が揺れましたが、止めた方がよいとセンサーが警告を発してくれて、この炭酸水にしました。でもこれも初めてみましたねぇ。

 

この炭酸水はおいしかったです。うちの近所でも売って欲しいくらい

 

こんな感じで非常に個性的なコンビニである立山サンダーバードでした。ちなみに店番をしているのが80歳くらいのおじいさんで自分の服装を見て

「お兄ちゃん恰好きまってるねぇ」「(トレッキングポールの入った袋を見て)それなに入ってるの?釣りにきたの?」

という感じで声をかけてくれました。奥には他にも店員さんがいたようですね。

 

とても楽しいコンビニですので皆さんも富山を訪れた際は行ってみてはいかがでしょうか?天気の良い日に尖山に登ってサンダーバードのおにぎりやサンドウィッチを食べるというのも良い休日だと思いますよ。

 

 

 

 

 

 

 

天外魔境妄想小説のまとめ

ここ最近Twitterで書き殴っている天外魔境の妄想小説tweetまとめです。

絵の落書きがあるなら、文章の落書きがあってもええじゃないか、という程度の気持ちで気楽に書いていきたいです。新しいのが書ければ随時更新していきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

卍丸は何を食べていたのか?

ゲームのキャラクターとはいえ卍丸達も人間ですから、24時間ずーっと根の一族と戦っているわけではありません。当然、夜は寝るでしょうし、寝る前には風呂に入るでしょうし、風呂に入れば着替えもするでしょう。

そして人間である以上、時間が経てばお腹が空きますから、食事をしなければいけません。これらの行為は天外魔境というゲームの中では描かれていませんが、画面の外では確実に行っているわけで…ゲーム内では描かれていないキャラクター達の日々の営みを想像して描いてみるのも二次創作の楽しさなのではないでしょうか。

 

さて、食事の話です。当然、卍丸も日に三度何かを食べていたのでしょうが、どういう食生活だったのでしょうか?(江戸時代中期までは一日二食が普通だったらしいので卍丸も二食だったのかもしれませんが、火の一族も一種の肉体労働なのでエネルギー補給のために三度食べていたのかも…)

「母ちゃんお代わり!」のシーンでもわかるように卍丸が家にいる際は母親である、お春さんが全て用意してくれていたのでしょう。でもって卍丸が白川村から旅立つ日、昼食と夕食くらいなら、お春さんが用意してくれた弁当を食べたのかもしれません。

しかし、翌日の朝食からは自分で何とかして食事を都合しなければなりません。さてどうする卍丸!?

「外食をすればいいのでは?」という意見も聞こえてきそうですが、天外魔境Ⅱの舞台となった時代は室町中期から末期が該当するようです。そして日本の歴史で外食産業が発展し始めたのは江戸時代中期以降だといわれています。卍丸が旅したジパングの世界は外食産業がまだまだ貧弱だった可能性があるわけです。(勿論、ジパングと現実の日本の歴史は似て非なるものであり、ジパングでは既に外食産業が活発であった可能性もあります。)

外食に頼れない時代の旅では、食料だけでなく料理に必要な道具(鍋とか皿とか)も全て持ち運んで自炊していたそうなので、卍丸もそれらを風呂敷に包んで旅をしていたのかもしれません。そして食事時になると薪を集めて、火を起こして家にいた時はやったこともない料理に挑戦していたのかも。

当然、最初は慣れないことでしょうから米が上手く焚けなくて生煮えになったり、魚の焼き方が分からなくて黒焦げにしてしまったり、失敗だらけだったのかもしれません。旅をすることで母親のありがたさに初めて気がつく15歳の少年、そんな場面もあったのかもしれません。

 

とはいえジパングを救うために旅をしている火の一族ですから、その土地土地で応援してくれている人も数多くいるはずです。宿や食事の世話をしてくれる人もいたでしょうから、実は案外良い物を食べていたのかもしれません。

というか本州の西日本各地を旅しているわけで、各地の美味しい物を食べる機会も多かった可能性はあります。粗食に堪えて旅をしていたというのもあり得ますが、逆に15歳にしては舌が肥えた旅をしていた可能性もあるわけで。

少なくとも各地の根の将軍を倒した後はその土地の人々は、根の一族の心配をしなくていいわけで、そりゃあ地域を挙げて卍丸達を歓待するでしょう。

 

そんなこんなで時に自炊をし、時に豪華なもてなしを受けて旅を続け、ついにヨミを倒してジパングに平和を取り戻した卍丸。エンディングで京都の送り火が描かれていましたが、盛大な慰労会も開催されたことでしょう。もう何も心配することはないのですから、卍丸も気兼ねなく豪華な食事が楽しめたはずです。

 

そして楽しい時間はあっという間に過ぎて火の勇者達もそれぞれの場所に帰っていきます。卍丸はお春さん、卍之介と一緒に歩いて白川村まで帰ったのかな?久々の我が家にホッと一息ついているとお春さんが、食事を用意してくれました。念願の母の手料理を楽しみにしていた卍丸の前に置かれたのが、『かて飯』なわけです。

かて飯というのは米に稗や蕎麦などの雑穀、豆や大根などの野菜を混ぜて全体の量を増やした飯のことです。昔は白米(所謂銀シャリ)が食べられるなんてハレの日くらいだ、というような話を聞いたことがあるかもしれませんが、それくらい白米というのは貴重な食べ物だったので、普段はかて飯が一般的だったようです。

白川郷も例外ではなく、近年になって米の品種改良や輸送手段の向上が起こるまでは米はやはり貴重な食べ物だったようです。(養蚕や火薬の材料となる硝石作りで現金収入を得ていたようですが、それでもって米を十分購入出来ていたかどうかは、ちょっと不明ですね。この点、勉強しなければなりません。)

 

稗や蕎麦、大根が混じっているために全体的に茶色ぽく、銀シャリを食べ慣れていた卍丸からすると久々の我が家の飯は殺風景に映ったかもしれません。赤カブの漬物が昔から名物だったそうなので副食もその程度だったのかも。

とはいえ念願の母の手料理、卍丸は喜んで箸を動かし、かて飯を口に運び、咀嚼します。すると噛むうちに卍丸はこの一年間使われていなかった部分の脳細胞が一気に活発になってきたような感覚に襲われました。ボソボソとした食感でお世辞にも美味とはいえません。しかし、卍丸にとって母がつくってくれたかて飯こそが、生まれ故郷を象徴する存在であり、噛めば噛むほど、あぁ俺は家に帰って来たんだ…という思いに浸るのでした。

お春さんはもっとこんなものしか用意できなくてごめんさない、と謝りますが、卍丸の箸は止まりません。そして全て平らげると満足した表情で母に茶碗を突き出して、こう告げるのです。

 

「母ちゃん、おかわり!」

 

と。

 

 

 

 

…という妄想でした。こういう場面を小説に出来たら面白いかもしれませんが、現状思っているだけです。

蒼き流星SPTレイズナー 第一部の振り返り『地球編』

続いて地球側のキャラクター紹介です。

ところでコズミックカルチャークラブ(CCC)ですが、そこに在籍している少年少女たちは全員、知力・体力・人間性共に優れており、こういった作品でありがちな他人の足を引っ張ったり、身勝手な言動を取る人間は一人もいません。CCCのメンバーは国連所属という言わば、地球を代表する面々であり、全員がエリートです。

劇中で彼らは異星の戦闘メカや宇宙船を操縦し、地球に帰還するのですが、普通に考えたら流石に無茶な描写なのでは…と思いそうになりますが、第一話から一貫してCCCのメンバーは地球を代表するエリートとして描かれていますので、ギリギリ出来ないことも無いかな、と視聴者としても納得できるかと思います。(ちなみに彼らはエリートであり、しかもシモーヌやアーサーの実家は相当な名家であると思われますが、だからといって彼らからはエリートキャラ特有の嫌味な感じは一切せず、そういう意味でも好感度が高いです。)

 

 

アルバトロ・ナル・エイジ・アスカ

我らが主人公。なのだが、いまいち目立たない…エイジという少年は聡明で判断力にも優れ、慈愛の精神に富み、SPTの腕前も一流とこれといって欠点がない人間性の持ち主であるが、欠点が無いゆえに却って印象に残らないように感じます。またエイジの不殺主義は、エイジの境遇を考えると納得出来るものではありますが、作中においては中途半端さを感じさせてしまうのも確かです。

エイジが、地球に危機を知らせに来たということが物語の始まりとなっていますが、それ以降のエイジは物語に対して受け身になっていることも影響しているかもしれません。(基本的にレイズナーという作品はエイジ一行が、グラドス軍の襲撃からいかに生き延びるか、という状況の連続で話が進んでいくので。)

とはいえ主人公らしい主人公であることは確かであり、エイジの持つ自己犠牲の精神が作品全体に程よい緊張感を与えています。

 

アーサー・カミングス・Jr.

CCCの最年長。

『毒にも薬にもならない』という表現がありますが、まさしくアーサーの為にあるような言葉だと思います。とにかくお人好しな善人といったキャラクターであり、貴重なコメディリリーフとして、ややもすれば暗く陰鬱になりがちな本作の空気を適度に和らげてくれています。

レイズナーについて触れているウェブサイトや書籍では、アーサーは大抵「頼りない」とか「弱気」とか評されているように感じますが、私はそれに関しては否と言いたいです。

第一話が始まってしばらくの間はCCCのメンバーは生き残りの大人達に頼り切った状況が続きますが、その中で最も自主性を発揮していたのはアーサーであり、ビルたち国連職員に現在の状況を聞きに行き、そこで得た情報を他のメンバーに教えたりもしていました。(その際アーサーはビル達に対して自分達も情報を知る権利がある、と訴えていましたが、本当に弱気な少年なら大人に対してこんなこと言えないでしょう。)

「頼りない」に関してもアーサーはSPTの操縦からは早々に脱落してしまいましたが、その後もシャトルの操縦やシャトルの機銃での援護射撃等は率先して行っていました。レイズナーはロボットアニメですから、ロボット(SPT)の操縦を諦めたアーサーをどうしても軽く評価してしまいがちですが、実際本編を視聴してみるとアーサーの貢献度はデビッドやロアンに何ら劣るものでは無いと思います。

さらにアーサーについて見逃せないのが、一見すると弱気に思える発言も実は事の本質を見抜いているからこそ、というのがあります。例を上げるとデビッドとロアンがSPTの操縦にのめり込んで、やや自信過剰になった際にアーサーは「まだ未熟なのに無茶しちゃマズい。」と発言しています。これだけ見ると二人に水を差したようにも思えますが、実際その話のラストでデビッドとロアンはグラドス軍SPTに手も足も出ず、危うく殺されかけており、アーサーが危惧した通りになっています。

また、アメリカ軍のダニー少佐がグラドス軍に襲撃され、窮地に陥った際、エイジ達は救援に向かいますが、その際もアーサーは地球人は自分達のSPTのことを知らないのだから、エイジ達も撃たれるのでは、と危惧しましたが、実際その通りになっていました。

そういう意味ではアーサーというのはCCCのブレーキ役なのだと思います。現実でもそうですが、創作においては積極的な言動をするキャラクターについ注目が集まりますが、アーサーのように一見弱気に見えるが、実は誰よりも本質を理解している存在も重要です。現実でも創作でもそういう人を見逃さないようにしたいものです。

ちなみにアーサーはCCCのメンバーで唯一、家族(母親)が登場しており、その母親というのが分かりやすく過保護であり、地球帰還後のアーサーを幼児の様に扱うのですが、アーサーはそんな母親に甘えるわけでもなく、親離れした男の風格の様なものを漂わせています。このシーンのアーサーは非常にカッコいいです。

 

デビッド・ラザフォード

CCCの特攻隊長

第一話のグラドスの攻撃により親友のジュノを失う。序盤におけるデビッドの感情はそのことで占められており、同時にグラドス人であるエイジに強い敵意を持ち、何度となくエイジに暴行を加えた。そんなデビッドが徐々にエイジを許し、信頼し、そして友情を深める過程は本作の魅力の一つ。

アーサーがCCCのブレーキなら、デビッドはまさしくアクセル的存在であり、戦闘においてもとにかく積極的であり、エイジがゲイルに投降を決めた際は自分一人でも戦うと宣言していました。

戦闘においてはSPTベイブルに乗って戦いますが、ロアン程は操縦センスに恵まれなかったのか、結局有人SPTは一機も撃破できずに終わっています。

 

ロアン・デミトリッヒ

CCCの眼鏡担当。

眼鏡をかけた風貌と気真面目な喋り方から、堅物な秀才というイメージを持ちそうになるが、案外くだけたところもありアーサーとは凸凹コンビといったやり取りを毎回見せてくれる。

SPTの操縦センスも高いようで初めてSPTで戦った際も相手に一発攻撃を当ててみせ、第一部最終決戦では、単独で敵SPTを撃破してみせた。

しかし、ロアン本人が、やや控えめな性格をしていることもあってか、デビッドやアーサーと比べるとあまり目立たない存在であるように思います。彼がキャラクターとして本領を発揮するのは、第二部になってからでしょうか。

またエイジの仲間達の中で唯一恋愛要素に絡んでいなかったりもする。(シモーヌからも年下ということで恋愛対象から外されていた。)

 

シモーヌ・ルフラン

やや皮肉屋な面があるものの基本的に明るく活発な少女であり、しかも実家は相当な名家かつ資産家であると思われる。(なんたって執事が直々に迎えに来るくらいなのだから。)

恋愛要素においてもデビッド、アーサーの二人から言い寄られるが、シモーヌ自身は異星からの異邦人であるエイジに惹かれているというお姫様的ポジションでもあります。

彼女の魅力といえば、非常に印象的な台詞の数々が上げられるでしょう。CCCのメンバーは全員そうですが、十代の少年少女でありながら高い教養と知性を持ち、自己を確立させていますが、シモーヌの場合、特にそれが発言から感じられます。

横暴な権威に屈せず、自分の事は自分で決めるという姿勢はまさに大人のそれであり、彼女のそういった精神もまたレイズナーという作品の格調高さに貢献していると思います。(どーでもいいが、ムダにパンチラ描写があり、そういう意味でも重要人物だ、笑。)

 

エリザベス・クレブリー

国連に所属する医師であり、CCCの引率者でもある。

第六話で生き残りの国連職員たちが全員死亡した後は、一行の唯一の成人としてメンバーの精神的支柱となり続け、地球への帰還を果たした。

個人的な意見としてエリザベスこそレイズナーという作品において最も重要な存在であり、作品における貢献度も最大のものがあると思っています。

レイズナーという作品は一種の格調高さに包まれていますが、その格調高さはエリザベスに寄るところが大きいと思います。常に冷静沈着であり、時に厳しく、時に優しく生徒達を導き続けるその姿は、大袈裟でなく聖母の様な安心感を視聴者に与えてくれます。

引率した生徒と同僚の大半を目の前で殺され、それでも生き残った生徒を無事地球に連れて帰るという困難極まる立場に置かれながら、一切弱気な所を見せなかった姿勢はアニメキャラでありながら、見習うところが大変多いように感じます。とはいえそんな冷静沈着なエリザベスもかつての恋人クレイトンに再会した時だけは、冷静とはいかず感情的な面を見せてくれますが、そういう点も含めて本当に魅力的な存在だと思います。

レイズナーというロボットアニメを作成する際、子供達だけの逃避行にせず、そこにエリザベスという大人を一人配置させたスタッフの方々の判断は本当に素晴らしいと思います。

個人的にこの作品で一番好きなキャラクターですね。

 

ジョン・クレイトン

アメリカ軍の軍人であり、エリザベスのかつての恋人でもある。月面基地において眼を負傷しながらも生き残った子供たちを指揮してスカルガンナーと戦っていた。

レイズナーという作品で最も面白い場面はどこか?と問われれば、「エリザベスとクレイトンの交流」と即答できます。それくらいこの二人のやりとりは本当に面白い。一見すると未練たらたらで復縁を迫るクレイトンともう終わったことだとドライに拒絶するエリザベスという関係に見えますが、実際そこまで単純な話では無いと思います。

二人の会話から互いの生き方や信念が異なってしまったため破局に繋がったことが分かりますが、そうだとしても今でも互いを思いやる『愛』は続いていることも察せられます。(勿論、エリザベスは医師ですから、患者であるクレイトンに医療者として寄り添っているのもあるのでしょうが、作中でのエリザベスの献身はどう考えてもそれ以上のものがあります。)

こういう人間の持つ精神の機微を描くというのは非常に難しいと思うのですが、それが見事に表現されているところにレイズナーという作品のレベルの高さを感じます。

それにしても結局、エリザベスが決戦から帰還後に少しは一緒に暮らせたんだろうか、グラドス侵攻の混乱の中でそれっきりという気もしますし…?

 

国連職員の生き残り(ビル、ボブ、ニコラエフ、メイ、フランソワ)

国連火星基地の生き残りであり、しばらくエリザベス達と行動を共にするが5話から6話にかけて全員ゴステロとロベリアに殺害された。

この五名は戦闘には関わらず、物語の序盤で退場することもあって語られることもほぼ無いですが、実際には非常に重要なキャラクターであると思います。

なぜなら六話までは米軍火星基地に逃げ込むことが、最大の目標として話が進みますが、そのための計画と実行は、ビルたち国連職員が中心になっているからです。彼らは国連火星基地所属ということからも分かるように宇宙生活のプロフェッショナルであり、優秀なスタッフです。彼らが生存している間はエリザベスですら特に何もしていません。(エリザベスが意見を求められた際、私は医者よ…と意見を遠慮したくらいですから。)

アーサーらCCCのメンバーに至ってはビルたちが地球に連れて帰ってくれる、という完全に受け身の立場でしかありませんでした。そういう意味では第六話までに話を主体的に動かし、行動しているのはビル達であり、実質的な主役という見方もあると思います。実際、ビル達が全員死んでしまったため、エリザベスはリーダーシップを発揮するようになり、CCCのメンバーは自分達の身は自分たちで守るという意識に目覚めています。以下個別に述べます。

ビル⇒リーダー格と思われる男性で彼が中心となって序盤の逃走計画は実行されている。人間的にも優れており、最年少であるアンナにも誠意を持って接していた。最期はロベリアのブレイバー相手に自動小銃一丁で立ち向かうも撲殺された。このシーンは殺したロベリアも殺されたビルも非常に真っ当な人間であることが余計に悲劇性を強調していると思います。

ボブ⇒サングラスをかけた大男。冗談好きなようで作中で何度もジョークを飛ばしている。アンナに対して下ネタ交じりのジョークを言ったことでエリザベスに怒られるシーンもあった。

ニコラエフ⇒金髪の男性。あまり目立たない。名前からソビエト系であると思われる。アメリカ系であろうビルやボブと一緒に働いていることは米ソの冷戦が世界観の基礎にある本作で一種の救いとなっている。

メイ・フランソワ⇒金髪の女性がメイで黒髪の女性がフランソワ。メンバーの中で最も早くエイジを信頼すべきだと意思表示をしており、偏見を持たない知性を感じさせる。エイジの尋問時にフランソワがビルの肩に手を置くという一秒程のシーンがあるが、その行為に多くの意味が込められている優れた表現であるので、機会を別にして述べたいと思います。

 

蒼き流星SPTレイズナー 第一部の振り返り『グラドス編』

レイズナーの第一部を視聴完了したということで各キャラクターを振り返っていきたいと思います。まずはグラドス関係者から…

 

アーマス・ゲイル

エイジの先輩かつ兄貴分的なキャラクターであり、シナリオにおいて中心的な存在であるのだが、あらゆる点で中途半端かつ矛盾に満ちたキャラクターとしか思えない。

ゲイルというキャラクターはとにかくキャラがブレているのだが、それが顕著に現れている部分に地球人への対応があります。

ゲイルは第一話から第二話にかけて指揮下の部隊と共に火星の国連基地を襲撃し、国連職員とCCCの大多数を虐殺しています。しかし、第十四話でエイジがゲイルに降伏することを決めた際、シャトルの仲間たちの身の安全を保障することを求めるとゲイルはこんなことを言うのです。

 

「心配するな、捕虜は正当に扱う。」

 

いやいやいや…自分が火星で何をやったか忘れたんでしょうか…あの国連基地からは何の反撃もなく、どう考えても非軍事施設であるとわかったはずです。ということは民間人だろうが、非戦闘員であろうが一切容赦なく殺し尽くすという方針をゲイルは貫いていたはずです。実際ゲイルは第二話で生存者がいると報告してきた部下に「殲滅しろ。」と発言しています。ましてや捕虜など捕る素振りも見せませんでした。それを今になって何を言っているんでしょうか、この人は…?正直これ、エイジの歓心を買い、投降させるために「清く正しい将校」を演じようとしているとしか見えません。

ただしゲイルを擁護するならば、ゲイルは第二話から第十四話の間に地球人に対する認識に変化が生じ、せめて民間人くらいは保護するべきだと考え直す様になったのかもしれません。(ズールから捕虜を全員処刑するよう指示された時に「えっ処刑ですって!?」と驚く場面があります。それにしても散々地球人を虐殺しといていまさらそんな命令に驚くなよ…)

ゲイルが地球人に対する人道性を意識するようになったというならそれは良いことでしょう。しかし、ゲイルがそう思っているだけでは意味がありません。彼は軍隊において中尉という大勢の部下を持つ将校であり、その部下にも自分の考えを浸透させなければ単なる独り善がりに過ぎません。しかし、ゲイルには一切そういった姿勢が見られないのも問題です。

彼の直属の部下は少尉であるカルラであり、カルラは「地球人など生かしておく必要が無い。」というグラドス人としては平均的な考えしか持っていません。(というか、それがゲイルの上司であるグレスコやズールの方針なのですが…)

ならばゲイルは直属の部下であるカルラの考えを改めさせ、自分の方針を理解させる必要があります。(何度も言いますが、それをしないのなら単なるゲイルの独り善がりでしかない。)しかし、前述したようにカルラが、地球人など生かしておく必要が無い、という「グラドスの常識」を述べた際、ゲイルは呆れたように

 

「もういい。」

 

と、言うだけで会話を切り上げて立ち去ってしまうのです。これって部下を教育するという将校の義務を完全に放棄してしまっているわけで本当に何やってんの?としか思えません。

それによりその前からゲイルに対する不信と苛立ちを募らせていたカルラは、ついに我慢しきれなくなり、ゲイルに無断で副官のズールに連絡するという越権行為に走らせてしまったのです。カルラはその後、独断でエイジ達を処刑しようとして結果的に逃走させてしまうという大失態を犯すのですが、これもゲイルがカルラを放置し続けたことが原因としか思えません。(そもそもゲイルのカルラに対する態度を観ていると、自分に惚れているのを良いことにカルラを便利な駒として扱っているとしか思えず、その時点でゲイルという男に良い印象が持てない。)

ゲイルが地球人に親近感を持つ過程がもう少し丁寧に描かれていれば不自然さも無かったと思いますが、変化があまりに唐突であることが残念に思います。(そうだとしてもカルラに対する対応の酷さからどっちにせよ好感は持てませんが。)

 

 

ゴステロ

この作品最大のマイナス要素。グラドスの負の面を象徴するキャラクターなのだろうが、作中の所業はもはや単なる人格破綻者としか思えない。まだその人格破綻の裏にグラドスに対する屈折した愛情があるとか、グラドス純血主義が行き過ぎただけ、という面があるのなら語ることもあるが、こいつ場合ただ単に人格が破綻しているだけであり、何もコメントすることが無い。

なぜこんな問題人物を大尉というそれなりの重職に付けているのか、ゴステロ本人というよりグラドスという組織自体の問題としか思えない。とにかく存在自体が荒唐無稽としか言えないキャラクターであり、観ていて白けること甚だしい。

 

 

ジュリア・アスカ

エイジの姉。エンディングでずーーーっと登場していたが、本編には第一部が終盤になるまで姿を見せず、さぞ当時の視聴者は「誰?」と思ったことだろう。

正直なところ最初から最後までシナリオへの必然性が感じられないテコ入れキャラクターという印象が否めない。ジュリアが民間人だったのか、軍人だったのかは最後まではっきりしないが、民間人だったのならいきなりSPTに乗れて、しかもゲイル級の腕前があるというのは明らかにおかしいし、軍人だったというならそんなエース級のパイロットと高性能機を使い捨てにするのもおかしい、というよく分からないキャラクターであった。

あと細かいことだが、ジュリアがグラドスに残ろうとしたから両親も地球行きを諦めたというのもイマイチよく分からない理由だったりする。グラドスに残るジュリアが心配なのは分かるが、エイジを地球に向かわせた時点で「反逆者の家族」扱いは避けられないのだから、エイジの父だけはどうあっても地球に向かうべきなのでは…と思ってしまう。(エイジの父は国連関係者にも知り合いが大勢いるので火星に到着した時点で話が極めてスムーズに進むはずなのだから。)

少年であるエイジを地球に送らなければシナリオにならないというのは分かりますが、そこはもう少し説得力のある理由にして欲しかったなぁ、と思います。

 

 

ジール・カルラ

不 憫

ただただその一言が似合う女性士官。SPTパイロットとしてエイジを軽く翻弄する腕前があり、現場指揮官としても柔軟な作戦でエイジ達を何度も窮地に追いやっており優秀なのは確かだが、周囲に振り回され続けている不憫な女性。

上官のゲイルに職務以上の好意を抱いているのだが、そのゲイルが明らかに作戦に私情を挟んでおり、その曖昧な態度に振り回される姿は気の毒でならない。しかも、カルラはゲイルがグレスコの命令に違反していることを知っているのであり、その違反した命令に従わさせられているという、よく考えるとかなりイヤな立場にある。(もしゲイルが途中で戦死していたら、次級者であるカルラが責任を取らされる可能性があるわけで。)

おまけに部下にはナメられ(カルラ本人は部下を殺された際、すぐさま仇を討とうとするなど部下想いっぽいのに…)、ゲイル戦死後にはいきなり出てきた部外者(ジュリア)に愛する人の乗機を奪われ…と、踏んだり蹴ったりにも程がある。

しかし、カルラというキャラクターが魅力的なのはゲイルに惚れていながら、決して妄信はしていないというところにあります。ゲイルの曖昧な言動に明らかに腹を立てている場面も多いですし(もの凄い棒読みでゲイルに言い返している場面がある。)、ゲイルの発言に納得できない時は猛然と反論しています。周りに振り回されるだけでなく、自己を確立しているからこそ、不憫さが魅力に転化しているとも言えるでしょう。

(余談ではありますが、カルラはいかにも80年代というクセの強い髪型と化粧をしていることに加え、声優さんの声質が非常に可愛らしいこともあって、ヘルメット姿で喋っている時が一番魅力的にに見えたりする。)

 

ガステン

ゴステロの部下その一。

ゴステロの部下を使い捨てにする所業に反旗を翻し、エイジに助太刀するが、返り討ちにされてしまうキャラクター。一話限りの登場ではあるが、エイジと心を通わせる描写があり、グラドス人と地球人も分かりあえる可能性を最初に示したという意味では重要なキャラクターだと思います。

 

ロベリア

ゴステロの部下その二。ガステンとは軍学校の同期で親しい間柄だったようである。

登場時点からゴステロの規則違反を咎めるなど真っ当な軍人であることが分かる。さらに地球人に対する差別意識を持たず、人道性にも配慮できる精神の持ち主であることが察せられる。

例として『明らかに非武装のバギーへの攻撃を躊躇う』『非武装、無防備の相手への攻撃命令に反論する』『やむなく国連職員のビルを殺害した際に苦痛に満ちた表情を浮かべる』『子供であるアンナの存在に衝撃を受ける』…とこんなところでしょうか。

人道性と命令への服従義務の間に挟まれて苦悩する姿は非常に人間的であり、感情移入を誘います。無抵抗の相手や子供なんて殺したくない、しかし軍人である以上は命令には逆らえない…ロベリアが感情を押し殺してビルを殺害するシーンはこのアニメで最も悲劇的な場面であると思います。

そして最終的には上官の横暴に立ち向かうという姿こそ、ガステンと合わせてまさしく『ブレイバー=勇気ある者』に相応しいと思います。(エイジに対しても甘い顔はせず、あくまで犯罪者として逮捕しようとする厳しさも実に良い。)

見た目もハンサムですし、前述したように人間味のある性格をしていることもあり、この作品で最もカッコいい存在だと思います。(もしスパロボの登場することがあれば、ぜひ操作可能キャラにして欲しいですね。)

ただ、ロベリアの唯一残念なのは死に方があまりに不用心だということですね。ゴステロ軍法会議にかけると断言した以上、ゴステロは何としてでもロベリアを殺そうとするでしょう。それなのにゴステロのSPTをそのままにしてエイジの逮捕に向かうのは不自然過ぎますね。

 

 

ズール

グレスコの副官。見た目と名前の感じから嫌味なタイプの人間と思ってしまいそうになるが、確かに部下を叱責しているシーンは多いものの、その叱責の内容自体は別におかしなものではない。ゲイルを叱責しているシーンが多いが、ゲイルの行為は叱責されて当然なので、当たり前のことをしているだけでしょう。

むしろ普段はゲイルやカルラのことを『君』と呼んでいたり、カルラが独断でズールに報告をした際はカルラを気遣っているような感じがしていたりと悪い印象は特にないですね。

グレスコとエイジのグラドス創生に関する話を盗み聞きしてしまったので殺されるが、そのグラドス創生の秘密が、秘密にするようなことか?と思ってしまう内容だったのでちょっと気の毒にすら思える。

 

 

グレスコ

グラドス地球派遣軍の総督であり、言わば敵の親玉である。

侵略軍のトップに相応しい重厚な人間性を感じさせる……のであるが、やっていることを眺めると疑問符が浮かんでしまう。

ゲイルの後任にゴステロの様な人格破綻者を据えた人を見る目の無さもおかしいが、さらにおかしいのはグラドスの技術が地球に流出するという危険性があるのにゲイル戦死後にエイジ達の追跡を打ち切ってしまったことでしょう。

エイジの迎撃任務をスカルガンナーという恐ろしいことは確かだが、性能的にかなり問題のある無人機に任せっきりにして結果的に地球人にレイズナーの調査を許してしまったのはいかがなものか。それでいてエイジがグラドス創生の秘密を知っていると分かると急に焦りだすのだから、やっていることがチグハグに思えてしまう。

支配者としての威厳を感じさせる人物なだけにそういう点が残念。

 

グレスコの女性秘書

常に無表情で職務に励んでいるが、グレスコがオゾン層破壊による地球への大虐殺計画を命じた際には抗議するような表情を向けていた。メイがビルの肩に手を置くシーンもそうですが、こういう言葉を用いないメッセージというのは観ていて非常に印象に残ります。

職務において感情を見せない彼女の表情が初めて変化したということが、これから実行される作戦がいかに非人道的であるかを物語っています。

 

 

どうもグラドスという組織は下級者は魅力的でも上級者はどうかと思う点が多いですね…

蒼き流星SPTレイズナー 第24話『光になったエイジ』

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ついにグラドス艦隊に向けて決死の出撃を開始するアーサー達、エイジもそこに合流します。さらに世界各国の残存兵力が、エイジ達の護衛の為に駆けつけるに及んで一気に士気が高まります。もしかして勝てるかもしれない……そんな希望が僅かながらも生まれてきました。

エイジはアンナまでシャトルに乗り込んでいることに驚きます。(実際アンナはシャトルの操縦や戦闘にほぼ関わっていないですからね。)これに対し、シモーヌ

 

「私達は火星以来、自分達のことは自分達で決めてきたわ。今度もそうよ。」

 

と、力強く宣言します。これなんですよね、レイズナーという作品に貫かれている精神は。想像を絶する困難に遭遇した少年少女たちが、それでも諦めることなく故郷に帰るために最善を尽くす。誰一人として他人の脚を引っ張る様なこともせず、全員が己の責任を果たそうとしています。こういった自主独立の精神が貫かれていることが、レイズナーという作品に快い緊張感を産み出しているのだと思います。そういう意味ではCCCのメンバーは全員、子供ではなく大人なんですよ。大人と子供の区別は決して年齢の上下ではなく、己の行動に責任がとれれば、それで大人なのだと思います。(それを考えるとゴステロなんかは完全に子供ですね、何一つ自分のやったことに責任を取ろうとしなかったのだから。)

 

いよいよグレスコ艦隊に突入というタイミングとなり、護衛の各国の戦闘機パイロット達からエイジ達は励ましの言葉を掛けられます。一瞬ではありますが、人類の団結を感じさせる暖かい雰囲気に包まれます。そしてグラドスのSPT隊と地球の戦闘機隊が、会敵し交戦となります。今回は地球側も意地を見せ、それなりに善戦しますが、やはりというべきかグラドス軍にはかなわず、次々と撃墜されていきます。

地球人たちが自分らを守るために次々斃れていくのに耐えきれなくなったデビッド達はSPTに乗り込んで出撃しようとします。もはやエイジ・デビッド・ロアンの三名に死地に向かう迷いはありません。

 

しかし、ここでシモーヌが涙ながらにエイジ達を引き留めます。彼女にすればわずかな希望にすがってここまで来たものの厳しい現実を突き付けられ、破滅は避けられないことに気がついたのでしょう。ここまで斜に構えたような皮肉な言動を取り続けてきたシモーヌですが、今度ばかりは感情を爆発させて泣き叫びます。ましてこのままでは自分が愛する人が永遠に去ってしまうかもしれないのです。大国間の歪な軍拡競争、そしてグラドスという異星の侵略主義の果てに自分達が何故、死ななければならないのか、これまでの戦いは降りかかる火の粉を払うことで精一杯でしたが、今こうして『政治』というものに直面してみるとその理不尽さに絶望的な想いを抱いているのでしょう。

 

しかし、シモーヌの荒れ狂う感情を沈めたのはデビッドの強引な口づけでした。そして「俺はお前が好きだ。」という愛の言葉。(高橋監督作品でこういう直接的な愛情表現が出てくるのは珍しい。)デビッドもまたこの世に悔いを残したくないのでしょう。

それにデビッドの行為を見たアーサーはガックリと肩を落とします。自分もシモーヌに気があったとはいえ、デビッドと比べると気迫が違ったということで諦めがついたのでしょう、笑。しかし、そんなアーサーも出撃するロアンに対しては

「ロアン死ぬんじゃないぞ!生きてみんなでもう一度会うんだから!僕らは死んじゃいけないんだ!」

と熱い激励の言葉を送ります。物語の最初から凸凹コンビのような関係だった二人ですが、固い絆が生まれていることが分かります。そしてこの絆は第二部にも引き継がれます。

 

デビッドとロアンはSPTに乗り込み、シャトルにはエイジだけが残されました。そしてエイジも出撃というタイミングになって思わずシモーヌはエイジに駆け寄ろうとしますが、それより一瞬早くアンナがエイジに駆け寄ります。そして前話の最後で摘んでいたヒナギクの花をエイジに手渡します。この演出はニクイというべきか、第一話でアンナは国連職員のビルから火星で育った一輪のバラの花を貰いましたが、そのバラはグラドスの暴力によって無惨に散りました。しかし、今になってアンナは地球に咲く花を異星人の少年に手渡しました。バラとヒナギクという花によってこの作品は一つの繋がりが出来ているのです。こういう描写があるかどうかで、作品の緊張感も変わってくると思います。

そしてシモーヌは結局、アンナに先を越された形になってしまい、エイジに自分の想いを伝えることができませんでした。うな垂れるシモーヌ、そして彼女に優しく寄り添うエリザベス。

 

シャトルから飛び出し、戦闘に突入するエイジ達。デビッドもロアンも奮戦し、デビッドはソロコムを中破させ、ロアンは単独でソロコムを撃墜させます。無人機であるTSスカルガンナーを除けば、今回初めてロアンはSPTを撃破しました。デビッドに関しては中破が最高の戦果となりました。元が素人の少年であるデビッドとロアンにすればこれが考えられる最高の成果になるのでしょう。(ちなみにロアンがソロコムを撃墜させた際、ソロコムのパイロットは脱出しており、殺人を犯していないことが印象付けられています。)

しかし、その代償は大きくロアンのバルディも大きく破損し、戦闘継続が不可能となります。ギウラを含むSPT隊は全て撃退し、何とか第一波攻撃はしのぎ切ります。(それにしてもほぼエイジ単独で、しかもV-MAXを使わずにギウラ隊を撃破しており、さすがにエイジが強すぎる気もしますが…)

第二派の攻撃となればもうデビッドとロアンは撃破されるのを待つだけです。二人を死なせるわけにいかないエイジは、デビッドにロアンを介助してシャトルに収容するよう伝えるとそのまま、V-MAXを発動させグレスコの母艦を目指して突撃します。まさしく『光となった』エイジ。

残された可能性としてはグレスコの母艦を破壊し、グレスコ以下の首脳陣を殺害することくらいでしょう。いや、例えそれが出来ようとグラドス軍の主戦力は残ったままであり、新しい指揮官が赴任してくるだけなのかもしれません。しかし、エイジは一縷の望みに全てを託し、光となって突入します。

 

「行くぞレイ!地球を守る僕の戦いは今始まるんだ!」

 

そして光に包まれる宇宙。エイジは、そして地球の命運は…

 

 

レイズナー第一部、完。

 

蒼き流星SPTレイズナー 第23話『奇跡を求めて』

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地球へ降下しつつ、ジュリアらの追撃隊を振り切ろうとするエイジ。何とかジュリアを説得しようとしますが、ジュリアは戸惑いは見せつつも攻撃は止めず、レイズナーとブラッディカイザルは揉み合いになります。

ジュリアの監視を任されているギウラは部下にジュリアごとエイジを攻撃して二人まとめて殺害することを命じます。ギウラ曰く「グレスコ閣下は仰られた、あらゆる手段を使ってもレイズナーを破壊せよ、と…」だそうですが、前回も述べましたが、グレスコもそこまでレイズナーを危険視しているなら、ゲイル戦死後に何でエイジ達を放置したのか謎です。(グラドスの技術が地球に渡るくらいなら見逃せるが、グラドス創生の秘密が暴露されるとなると話は別だ、ということなのかもしれませんが…でも、前回も述べた様にグラドス創生の秘密ってそこまで隠すような説得力に欠けるんですよねぇ。)

しかも、エイジをジュリアごと殺すという判断ですが、いや~それだったら、ジュリアをわざわざワープ装置まで使って呼びだした意味が無いと思うのですが…これは前回も述べましたが、何故かジュリアはゲイル級のSPT操縦の腕前を持っているようですが、そんなエース級パイロットを使い捨てにする必要性も感じられませんし、ブラッディカイザルってかなりの高性能機のはずですから、勿体ないにも程があります。こんな扱いをするくらいなら、まだ当初ジュリアが思っていたようにエイジに対する説得をさせた方が、余程効果的だったと思うのですが…

正直なところジュリア関連の要素は、シナリオの整合性よりも『エイジとその姉を戦わせたら話が盛り上がりそうだから。』というテコ入れ感が強くて鼻につきますね。ここまでとても丁寧に話を進めておきながら、これはちょっと残念に思います。

 

それはそうとブラッディカイザルは撃墜され、ジュリアは海の底に沈んでいきます。エイジはV-MAXを発動させ、ギウラら追撃隊を蹴散らします。(この時、久々にSPTの脱出装置が見られます。)

このV-MAXですが、ロボットアニメにおいて非常に革新的であり、カッコいいギミックだと思うのですが、同時に諸刃の剣でもあると思います。現時点においてはV-MAXはグラドス側にも無い技術で、これを使えば初見の相手ならまず反応不可能であり、一方的に攻撃することが出来ます。しかし、これは例えるなら水戸黄門の印籠みたいなものでピンチになっても『印籠=V-MAX』を見せればどうにかなる、ということであり、話がワンパターンになってしまう危険性もありますので、乱発できるものでは無いなと思います。第二部ではそこの対策も色々とあるようですので楽しみですね。

 

舞台は移り、グラドス側では地球侵攻の最終段階に突入し、地球側は迎撃のために世界各国が協力した艦隊が出撃します。呼び戻されたCCCのメンバーはただ事の成り行きを眺める事しかできません。視聴者としてもこれまで何度も地球艦隊がグラドスの攻撃で壊滅してきているのを観ているので不安しかありません。しかも、これまで地球側が戦ったグラドス軍は、先遣隊ともいうべき小規模な勢力でしかありませんでしたが、それでも地球側はほとんど抵抗も出来ず壊滅し続けてきました。それが今回は、グラドス軍の大艦隊が相手なのですから、もはや絶望的としか言えません。

 

嫌な予想は的中し(本当に嫌な予想がそのままになるアニメだ…)、地球の大艦隊は何ら成果もあげられず壊滅します。もはや地球人に残された兵器はただ一つ、人間にとって禁じ手ともいえる核兵器しかありません。地球への被爆の危険性も含みつつ、大量の核ミサイルが地球から、グラドス艦隊に向けて発射されます………が、やはりというべきか、全ての核ミサイルはグラドス艦隊に届く前に迎撃されてしまいます。

艦隊は壊滅し、地球人にとって究極の兵器ともいえる核ミサイルですら何の効果もありませんでした。わかってはいましたが、科学レベルが違い過ぎて抵抗するしない以前の問題でしかありません。

事ここに至ってはもはや白旗を挙げて降伏するしかありません。しかし、まだたった一つだけ、残された可能性があります。それこそがエイジ達が持ち込んだグラドス製兵器なのですが、当然それを動かせるのはエイジとCCCのメンバーしかいません。

とはいえ、エイジもアーサー達も地球到着後、同じ地球人から不愉快な目に合い続けてきました。それでありながら、今になって助けを求めるとはあまりにも都合が良いとしか言えません。しかし、大統領が直々にエリザベス達に連絡し助けを求めてきます。(この時、電話の相手が大統領だと知らないデビッドが、そうと知った瞬間直立不動になっているところにデビッドもまた育ちが良いところを感じます、笑。)

 

しかし、大統領から頼まれたとはいえアーサー達はグラドスがいかに強大な相手なのか地球の誰よりも良く知っています。それと戦えなど、地球の為に死ねと言われているのと同じなのですから、当然全員悩みます。この時、全員の心に去来しているのは未だ行方不明のエイジの事です。エイジはたった一人で全てを捨てて、もう一つの故郷、地球の為に犠牲になり続けてくれました。今こそ、エイジが守ろうとした地球の為に自分たち地球人が立ち上がるべきなのでは……それに彼らは一人ではありません。火星に降り立ったその日から苦楽を共にし、硬い絆で結ばれた仲間がいます。

アーサー、デビッド、ロアン、シモーヌ、エリザベス、アンナ。6名は最後の希望にかけてグラドスと戦うことを決意します。第一話からそうでしたが、エイジを含めたこの7名は本当に良くやっています。絶望的な状況の中で全員が最善の策を探り、生への可能性を追い続けてきました。こういう作品だとよく足を引っ張るキャラやそうでなくても無能な働き者系のキャラが出てきがちですが、彼らはそういう事も無く、一人一人が自らの責任において最善を尽くしています。このレイズナーというアニメはロボットアニメというジャンルではありますが、本質的には少年少女が、生き残るための努力をする、その姿を観るという作品であると思います。

 

出撃前、アンナは空港の片隅に咲く花に語り掛けます。そしてその花を一輪だけ貰うと戦いの場に連れて行きます。このシーンはおっ!っと思いましたね。思い返せば、このレイズナーというアニメはアンナが国連職員のビルから一輪の花を受け取った瞬間からスタートしました。アンナがビルから受け取った花は理不尽な暴力により無惨に散りましたが、最終局面を迎えた今話においてアンナは再び一輪の花を手にします。

この一輪の花が何を意味するのか、再び絶望の始まりであるのか、それとも希望であるのか、アンナが手にしたヒナギクは当然何も答えてくれません。

ただ、人間がヒナギクに託した想い―――花言葉『平和』と『希望』であることだけ記しておきます。