蒼き流星SPTレイズナー 第22話『フォロンとの対決』

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※完全にネタバレに加えてほぼ批判的な内容です。

 

 

 

 

 

グレスコはエイジが『グラドス創生の秘密』を知っていることに危機感を覚え、このままにはしておけないと感じているようです。

うーん、しかしですね、グラドス創生の秘密以前に地球側にグラドスの技術力が流出すること自体が大変危険な事であるはずです。そのためにもゲイルに追撃隊を率いさせていたのですが、ならばなぜ、ゲイルの死後にエイジ達を放置してしまったのでしょうか?

カルラに追撃隊を引き継がせるとか、月に迎撃のための部隊を残留させるとかやり様はいくらでもあると思うのですが、グレスコがやったことといえば、月に無人機であるスカルガンナーを残しただけです。ここまで観てきて分かるようにスカルガンナーは確かに恐ろしい兵器ですが、対SPT戦となると火力不足であり、しかもオツムの方はイマイチにもほどがある性能でしかありません。そんな不完全な無人機に重要な任務を任せっきりにして、結局レイズナーは地球に降り立ち、地球人の調査を許してしまいました。それで今になって焦りだすというのはグレスコも迂闊過ぎるんじゃないでしょうか?

 

レイズナーがV-MAXを発動させて逃走してしまったのでグラドス軍の追撃隊は母船に引き上げてきます。そして赤いグライムカイザル(ブラッディカイザル)からパイロットが下りてきてヘルメットを取るとそこにいたのはエイジの姉であるジュリア・アスカでした。以前、ワープ装置まで使ってグラドス本星から呼びだしたのはブラッディカイザルに乗せてエイジと戦わせるためだったという事ですが………えー、なんのために??

そもそもジュリアって軍人なんでしょうか?明言はされていませんが、ワープ装置で呼びだされた時のグレスコとズールとの会話からは軍人という感じはせず、一般人でしかないような感じだったのですが。(ジュリアは自分が呼び出されたのはエイジを説得するためと思っていたくらいですから。)

仮にジュリアが一般人だとしてなんでブラッディカイザルを操縦できるんでしょうか?しかも、エイジが見たところゲイルと同等の操縦技術を持っているようですが、そんなエース級の腕前を何で一般人が持っているんですかね?(ロボットアニメとはそういうものだから、という意見がありそうな気もしますが、同じく一般人であったデビッドとロアンは多少はSPTの操縦に慣れてきたとはいえ、まだまだグラドス正規兵相手に真っ向から戦えるレベルではありません。同作品内でそういう描写をしておきながら、なぜジュリアだけ…?)

もしジュリアが正規の軍人だというなら、呼びだされた時の反応がおかしいですし、そもそも個別にワープ装置なんて使わずに普通に部隊に配属させればよいだけです。

そしてなぜジュリアをわざわざエイジと戦わせようとしているのかもよく分かりません。ジュリアのグラドスへの忠誠心を試すのが目的の一つのようですが、忠誠心を試して、それでどうするんでしょうか?重要なのはその後だと思うのですが……

しかも、グレスコも(故)ズールもエイジに近い関係であるゲイルを追撃部隊の責任者にしたところ、ゲイルが作戦に私情を挟んでことがややこしくなったのを経験しています。(ズールはそのことでゲイルを叱責しているくらいですから。)そこに来てなんでまたエイジと近い関係どころかその家族をエイジにぶつけようとするのでしょうか??また、ことがややこしくなるだけだと思うのですが……

 

それはそうとブラッディカイザルから降りたジュリアに久々登場のカルラが早速絡んできます。カルラにしたらジュリアの存在は異物でしかないでしょう。そもそも何でブラッディカイザルほどの高性能機を優秀なSPTパイロットである自分を差し置いて、ジュリアが乗っているのかも納得できないでしょうし、死んだ上官の機体をその恋人が乗るという私情100%な上層部の判断自体、腹に据えかねるものがあるでしょう。(カルラは正規の教育を受けてきた士官なのに…)

 

カルラはジュリアに絡んでいく中でゲイルと自分の間には愛があったのだ、と言ってしまいます。それを聴き逃さなかったジュリアはあなたとゲイルの間に愛などあるわけがない、と毅然と言い返します。それに激高したのかカルラはジュリアに拳銃を突き付けて耳元に発砲してみせますが、それ以上何もできず、屈辱のままジュリアを見送ります。

このシーンですが、カルラにとってゲイルと自分の間に愛があったというのは半分は嘘で、半分は本気なのではないかと思います。半分は嘘というのはカルラはゲイルから分かりやすい愛情表現は一切受けていませんし、周囲からすれば単なる上官と部下の関係としか映らなかったでしょう。(というか、実際部下にはカルラの片思いとしか思われていなかったですし。)

しかし、半分は本気というのはカルラは自分がゲイルの前で自決しようとした時にゲイルが自分を殴って止めてくれたという経験をしています。(しかも、頭を打たないいように手を支えてくれた。)

カルラにしたらこれこそが、ゲイルからの自分への愛情表現だったのだ、といいたいのではないでしょうか?勿論、それをもって愛があったとするのは、かなり無理があると思いますし、カルラも我ながら無理があると思っているからこそ、ジュリアに言い返された時に痛い所を突かれたという感じで激高したのではないかと。(そもそも男女の愛がある無い以前にゲイルとカルラは最前線で共に戦ってきたという軍人としての絆があるはずであり、少なくともそれだけはジュリアは経験していないでしょう。)

このシーンに関してはカルラの持つ女の悲しみのような感情が溢れており、観ていてあんまり良い気はしないですね。

またこのシーンが嫌なのが、他の士官であるギウラが、野次馬的に二人のやりとりを眺めていてカルラがジュリアに発砲した際に鼻で笑うような感じの笑みを浮かべて去っていくんですよね。こいつこの後の話でもそうですが、やっていることが小物臭いんですよねぇ。

その後、ジュリアの独白で本来は家族揃ってグラドスを脱出し、地球に危機を伝えに行く予定だったが、ジュリアがゲイルとの恋愛を優先したため、両親は地球行きをあきらめてエイジ一人に全てを託した……という経緯が語られます。

 

 

場面は移ってグラドス軍の会議へ。その会議を背景に前話で殺されたズールが宇宙葬されています。かつてカルラにゲイルの回収を許さなかった際、宇宙で戦う者は宇宙に葬られるのが定めだ、と言っていましたが、この度自分がそうなってしまいました。

会議では最終作戦として地球のオゾン層を破壊し、地球環境に致命的なダメージを与える計画が発表されています。そんなことして地球侵攻後にグラドス人がダメージを受けるのではないかと思ってしまいますが、大都市部のオゾン層に限定して破壊するとのことですので、その点は問題無いと判断されているのでしょう。

作戦開始となり軍人達が持ち場へ散っていきますが、その際、それまで一切の感情を露わにしてこなかったグレスコの女性秘書が、「それはあまりにも非人道的なのではないですか?」とでも言いたげな表情をグレスコに向けます。レイズナーは本当にこういう細かい人物描写に関しては優れていますね。

 

再び場面は移ってエイジとフォロンのシーン。エイジがついにグラドス創生の秘密について視聴者に説明してくれます。

 

「先史時代、滅びかかったグラドス人が栄えた文明を維持継承させるため、地球から人類の生命核を持ち帰り、グラドスにおいて保護育成した。それが現在のグラドス人の先祖だと、つまりグラドス人と地球人は同一人種である。」

 

 

と、これがグラドス創生の秘密なのだそうですが………いや、これってそんなに重要な秘密なんですかね?これは視聴者からすればこれまで話を観ていれば予想はつきますし、意外でも何でもありません。

さらに作中の地球人、グラドス人にとっても秘密にされなくともちょっと勘の良い人なら直感的に気がつく程度の内容だと思うのですが。ワープ航法が必要なほど遠く離れた星でありながら、グラドス人と地球人の身体構成はほぼ同じであり、エイジがそうであるようにグラドスと地球で混血が可能です。この事実だけでグラドスと地球の祖先は同じではないか、と気がつくと思うのですが…(エイジが地球到着後に徹底的に調べられたように、エイジの父もグラドス到着後に徹底的に調べられたはずです。)

確かに地球に対する人種的優越感を誇るグラドス人にとってその地球と自分達の祖先が同じであるというのはアイデンティティに影響をもたらすかもしれません。しかし、フォロンが言うようにそれは先史時代という気が遠くなるほど昔のことです。現在を生きるグラドス人にとってそこまで衝撃を与えますかね…?(地球人だって親の仇の如く嫌いあう民族はいくらでもありますが、その地球人も遡れば同じ祖であるはずです。しかし、だからみんな仲良くしようとは全くなっていません。)

それにエイジもツッコんでいますが、フォロンの言う『伝承』とはそれが事実か否か証明できるものが何もありません。フォロンはそれが伝承だと言い張るだけで数値的、考古学的な証拠を何も提示しようとしません。それすらせず先史時代にあったことをどうやって今の時代のグラドス人、地球人に信じさせようというのでしょうか。(もっといえばそういう証明が無いのになぜグラドスの首脳部はその伝承が事実だと信じているのか?エイジがツッコむということは、これはスタッフからのツッコミだということなのでは…?)

そもそもそれを秘密になどしなくともロベリアやゲイルの船に居た兵士等は、直感的に地球人も自分達と同じ人間だと気がついていた節があります。地球とグラドスの交流が本格的に始まれば、もっと多くのグラドス人、地球人が『真実』に気がつくでしょう。それを考えると果たしてそこまで秘密にするようなことなのか……おそらくここまでに地球人の死者は数万人単位で発生しているはずであり、もはやフォロンの言う事は全て空しく感じます。

 

その後、エイジはあれやこれやでフォロンを自分の管理下に置くことに成功し、フォロンは機能をレイに移して眠りにつきます。これでもってレイズナーはついに完全体となったのでした。

 

 

 

余談……ほぼ、批判一色になってしまいました。しかし、実際この話はツッコミ所が多すぎる…グラドス創生の秘密もそれ秘密にするようなことか?と思ってしまいますし、これ当時のアニメ雑誌等で話題にならなかったんですかね?

ただ、グレスコの秘書が見せた表情は本当に良かった。それまで何の感情も見せてこなかったあの女性が、そういう表情を見せたことで、これから起こる作戦がいかに非人道的であるか物語っていますので、こういうちょっとしたキャラクターの心情は一貫して素晴らしいですね。

それに今話はカルラの悲しいサガのようなものが感じられたのも良かったです、カルラは好きなキャラクターなので、どうもカルラの肩を持ってしまいがちになりますが。