完璧な漫画。

【完璧】

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もし完璧な漫画というものが、この世に存在するとしたらそれは『デビルマン』『寄生獣』『柔道部物語』の三つだと私は思っています。

この三作品に共通することは文句なしに面白いことやテーマの崇高さもありますが、それ以上に内容に一切の過不足が無く、物語の目標を達成したら大急ぎで幕を下ろしている事こそ、完璧たる所以でしょう。

読んだことのある方は分かるでしょうが、この三作品は一話どころか、一ページたりとも無駄が無く、テンポの良さは只事ではありません。

デビルマンの終盤で不動明が人類に失望し、それでも美樹に希望を見出し、そして絶望するという重要な展開はわずか5ページでしかありません。柔道部物語で三五が最大のライバルである西野を倒した後は少しだけ後日談があり、あの完璧なラストですぐお終いです。(サッで始まって、サッで終わるところが素晴らしい、笑)

だからこそ何度でも読み返しても面白いですし、スラスラ最後まで読むことが出来ます。

なんせデビルマンに関しては全部で5巻しかありません。しかし、デビルマンを読んで短過ぎるとか描写不足だとかいう感想を持つ人はいないのではないかと思います。5巻という内容の中で表現すべきことは全て表現し、それが終われば間髪入れずに完結する…だからこそデビルマンは数十年経った今でも日本漫画の金字塔という評価を受けているのです。

私は『あしたのジョー』や『北斗の拳』も大好きですが、あしたのジョーに関してはハリマオ戦はいらないと思いますし、北斗の拳は天帝編と修羅編の一部はテンポを害していると思っています。ジョジョに関しても3部以降は明らかに話がダレていると思います。

少し話が逸れますが、私がある時期から少年漫画を読まなくなったのもこれが関係しています。少年漫画ってとにかく連載が長くなりがちで、内容的に必然性があって長くなるなら良いのですが、「これどこに着地したいんだよ…?」と言いたくなるくらいフラフラしている作品も多いように感じます。

私は某海賊王漫画や某少年探偵漫画は少ししか読んだことがありませんが、あれっていつ海賊王になったり、高校生に戻ったりするんですかね?この二つに限った話ではないですが、作品の根幹として達成しなければならない課題にコミックス数十巻を費やしてもまだ到達できていないって『物語』としてどうなのよ…?と思ってしまいます。

漫画も物語である以上、デビルマンの様に語るべき物が尽きれば、そこで終わって欲しいです。つまり、全ての漫画は『キレー』に終わって欲しいなと。

 

 

………と、ここまで勝手なことを語ってきましたが、キレーに終わって欲しいなんていうのはあくまで一読者の感想でしかありません。当たり前ですが、漫画は美術館に飾る様な芸術品ではありません。(芸術品と呼べる作品も存在しているのはここでは置いといて。)

大前提として漫画とは描いて、刷って、売って、儲けるという商品・商売です。

トップクラスの作品では発行部数が軽く億を超えてくるというのが、漫画という世界なのですが(しかもそんな作品が両手両足使っても足りないくらいある。)、ここにキレーに終わって欲しい…という読者の勝手な意見を適用してみるとどうでしょうか?

私はどういう漫画であれ、物語に緊張感が保てる限界は長くても20~30巻だと思っています。(ちなみにギャグマンガは8巻までが限界だと思う。)

あの漫画もこの漫画もキレーに30巻で終われば当然、作者の収入も何分の一になるでしょうし、メディア展開、グッズ展開の機会も減るでしょう。また出版社、アニメ制作会社、グッズ制作会社などの仕事や利益も減るでしょう。商売ということを考えればキレーに終わったことで、大勢の人々が潤うチャンスを失ってしまうということになりかねません。

そもそも、いつも天外魔境の話ばかりしている私ですが、天外Ⅱは完璧な作品なんだからヘタにリメイクなんて作るなよ……とは思っていません。お世辞にも完成度が高いとは言えないPS2版天外Ⅱですが、あれがあったからこそ、現在進行形で系譜が続いて今でも天外魔境が新たな歴史を刻んでいるのだと思っています。もし、PCエンジンでキレーに終わっていたとしたら、「あぁ、天外魔境?そういえば昔そんなゲームがあったね。」となっていたかもしれません。

だから、私にとってPS2版の天外Ⅱはキレーじゃないかもしれないけれど、結果的に生まれてくれてありがとう!って作品なんです。

…なんか話があちこち行ってよくわかんなくなりましたが、要するにバランスだと思うんです。読者・消費者はキレーに終わって欲しいと思う、でも商売その他の都合を考えればそうもいかない。むしろキレーに終わらなかったことで物語自体に意外な好影響を与えるかもしれない、でもそっちに傾き過ぎて読者が読んでいて白けるようなことは止めて欲しい………作者さんや編集部さんにもそこのバランスを上手いこと探って欲しいなぁと思います。

 

なんでこんな訳のわからない文章を書いているかと言うと、わたモテ(私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!)ですよ。わたモテは修学旅行の少し前くらいから明らかにゾーンに入ったというか、こみさん風に野球で例えるならどこにボールが来てもヒットにできるような状態に突入しており、読んでいて「これはキレーに完璧に終われるかも!?」と思っていたのですが…

正直、最近ちょっとゾーンから外れることが増えていませんかね…?明らかなボール球を振っているというか、思い切ってストレートで三振を取りに行くところを外スラを投げて四球にしているというか…

内、田村、加藤あたりが出てきた時のこれ前も読んだよな…感が強くなっているというか、これもう少しギュッと出来ない…?感というか。自分としては物語上、達成すべき課題に一直線で進んでほしいなぁ…と。

しかし、前述したように「キレー」に行かないことが、わたモテという漫画に対して好影響を与えるのかもしれません。どういう展開になろうと谷川先生と編集部さんには良いバランスを探って欲しいですね。

 

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全部名作ですよ。