30年目の吹雪御前最強説

突然ですが、男は『最強』という頭の悪い言葉が大好きである。

 

ボクシングの各階級における歴代最強のチャンピオンは誰か?

・プロレスでガチンコ最強なのは誰か?(マサ斎藤…)

・『ホンダ・CBR1100XX』と『カワサキ・ZX-12R』と『スズキ・ハヤブサ』はどれが最強のバイクか?

・アーツとミルコのハイキックはどちらが凄いか?

・カブトムシとクワガタはどっちが強いか?

ガンダムバルキリーはどっちが強いか?

 

などなど…こんなしょうもない話題でご飯三杯食べられるし、こんな話題でガチ喧嘩になるのも男という生き物です。(たぶん)

天外魔境Ⅱも数多くの味方キャラ・敵キャラが入り乱れるロールプレイングゲームであるため、当然『最強議論』なる話をすることが可能である。しかしながら『創作物における最強』とはやっかいな概念であって、一見すると単純明快な答えが導き出されそうなものであるが、何をもって最強というのか、検証する角度によって全く答えが違ってくるものです。(これが現実世界の話なら例えば100m走において最強はウサイン・ボルトであることは明確であるし、プロ野球で最強なのはその年の日本シリーズで優勝したチームであることに疑問の余地はないだろう。ただし、格闘技などの対人個人競技だと対戦相手のレベルや相性などもあるので勝った人が最強とは単純に言い難い部分はありますが…)では、その角度とは何であるかというと…

 

  • 設定上の最強
  • プレイヤー(視聴者・読者)が体感した最強
  • 作中で残した成果における最強

 

この3つに分けられるかと思います。まず、最初の『設定上の最強』ですが、天外魔境Ⅱにおける『設定上の最強』となると、これはもう神すら倒してしまった卍丸ら火の一族になるでしょう。次点では神であるヨミとマリが該当するでしょう。そのまた次点となると神であるヨミの半分の攻撃力がある剛天明王でしょうか。(そもそも設定上の最強という話になると創造神である岸田今日子が最強なんじゃねーの?というのは置いといて)

次の『プレイヤー(視聴者・読者)が体感した最強』ですが、これはプレイヤーによる個人差があるとは思いますが、右のガーニン、名無しの十八番あたりがプレイヤーの体感としては強敵でしょうか、個人的には菊五郎は設定上は本職が役者で戦闘は素人だそうですが、プレイヤーとしてはかなりの強敵に感じました。他にも淡路島での暗殺者×3も結構な強敵だった気がします。名無しの十八番は剛天明王の兄弟という血筋としては一流だと思いますが、設定上突出した実力があるようには感じられませんし(精神的にも急にヘタれる部分があるし)、『設定上の最強』と『プレイヤーが体感した最強』という異なる概念において差がある代表的なキャラなのかもしれません。

そして最後の『作中で残した成果における最強』ですが、これは『設定上の最強』以上に客観的評価が可能な概念ではないかと思います。(設定は全て明らかになっている訳ではありませんし)、例えば死神三兄弟は卍丸が最初に対決する根の将軍ですが、彼らが作中において成し遂げた成果(つまり火の一族及びその協力者にいかに被害を与えたか)は特になかったりします。あえて挙げるなら卍丸の母親を誘拐して人質にとったくらいでしょうか。

ここではこの『作中で残した成果における最強』に注目して考察していきたいと思います。『成果』の内容ですが、一般の町民達に与えた被害というと根の将軍は全員与えていると思いますし、その被害も明確ではありませんので、ここでは『火の一族及びその協力者に与えた被害』という点に絞って考察していきたいと思います

 

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勿論、全ての将軍が卍丸達にとってはギリギリの戦いで勝てた超強敵であると思いますが、ここではあくまでゲーム中でプレイヤーに対して見せつけた『成果』に限定して考察していきます。

カブキを完封したはまぐり姫も強い(元が普通の人魚であることを考えるとかなりの戦果)ですし、危うく火の一族全員を溺死させかけた右のガーニンの成果も凄いですね。

しかし!ここで注目せざる得ないのが、吹雪御前の圧倒的な成果なのではないでしょうか。 

吹雪御前の成果を振り返ってみるとまず、『主人公の父親』と『ヒロインの両親』を殺害しているという点が凄い、こんなの普通ラスボスがやることですよ。しかも、卍丸の父親は火の一族の戦士ですし、絹の両親も酒呑童子は鬼族のリーダーであり、綾も火の一族の血を引く女であるのにそれを一人で殺しているという…

さらに現役の火の勇者である卍丸・カブキ・極楽を一瞬で戦闘不能に追い込んでいるのも凄い、変身能力により卍丸達が油断していたのもあるでしょうが、それでも数々の実戦を潜り抜けてきた卍丸達を一瞬で凍りつかせる術の切れ味の良さ。(そもそも卍丸達は百貫丸の奥に上位の根の将軍が控えているのを事前に知っており、警戒していたと思われるが、それでも術にかかってしまった。)

さらに吹雪御前の特筆すべき点として『指揮能力がある』ということも挙げられるかと思います。他の根の将軍たちは『将軍』と言いつつも配下の根の一族との関係があまり明らかになっていません。菊五郎と共に戦った典膳、くちなわ姫、角太郎、海老蔵は部下ではなく『友達』という対等な関係のようですし、はまぐり姫の配下にはワダツミ五人集がいますが、はまぐり姫が彼らに指示を与えているというより、登場時の台詞からは彼らが姫のために自発的に動いている印象を受けます。

で、吹雪御前ですが、彼女は大江山を襲撃し、鬼たちを殺戮した事件の指揮官であり、村人たちにもその姿を目撃されています。

 

大江山に攻撃を仕掛けたお侍たちは 何だか普通じゃない危ない

目つきをしていたわ

とくに女だてらにその侍たちを指揮してた女なんて 戦さの直後に 

平気で鬼の肉とか食べてたわ

見てる私が吐いちゃったわよ 相当戦さ慣れした連中じゃないと

ああはふるまえないと思うわ

 

 

そういや武士の大将は女だったな あそこまで徹底した残忍なことは

男の俺たちにはマネできねぇよ…

 

 

と、襲撃部隊の指揮官であったことが明示されています。村人たちから見て大江山を襲撃した侍たちが「普通じゃない危ない目つき」をしていた理由は襲撃者たちが根の一族であるからなのでしょうが、もしかすると吹雪御前が部下たちの狂気を引き出す力があり、さらにはそれだけ部下から恐れられている指揮官だったのかもしれません。 

さらに吹雪御前の特殊能力である『変身能力』もかなり高度な術ではないでしょうか。卍丸の父親が殺された詳細は不明ですが、おそらくこの変身能力に騙されてしまったと考えられます。また絹がデーロンに捕らわれ、綾(吹雪御前)と共に白銀城まで護送・監禁された際に当然、絹と『親子の会話』をしているはずですが、絹は綾が突然、卍丸達を氷漬けにするまで綾のことを一切疑っていないようです。このことから吹雪御前の変身能力は殺した者の外見だけでなく『精神・人格面』まで完全にコピーすることが可能であったのかもしれません。(もしかしたら白銀城まで護送・監禁されている間、二人とも猿轡でもかまされて会話できないようにしていた可能性もあります、正体を露見させないことを考えるとそちらのほうが安全策かもしれませんが、でもアニメシーンでそんな描写ないしなぁ…)

もう一人の女の将軍であるはまぐり姫がカブキの外見は完全コピーできても人格面は完全にコピー失敗していることを考えると吹雪御前の術のレベルの高さがわかりますね。(もっともはまぐり姫の幻術は国レベルで空間自体を変化させることが可能であり、吹雪御前の変身とは性質が異なるものなので比べても仕方ありませんが)

さらに吹雪御前の根の国における身分ですが、特にゲーム中に情報はありませんが、重要な襲撃部隊の指揮官を任せられるほどですから、根の国においては幹部クラスであることは間違いないでしょう。また『御前』という敬称ですが、これは貴人に対して使う言葉であり(御前会議とか言いますね)、私が所持している辞典では

 

ごぜん【御前】①貴人の座席の前(面前)の敬称。「-会議・-試合」 ②封建時代、家臣が貴人とその妻に対して用いた敬称。(呼びかけの場合や婦人・白拍子の名前の下に付けても用いられる)「-さま」

 

とあるので根の国における貴族階級に属する人物だったのではないでしょうか。彼女が大江山襲撃で指揮官として活躍し、ナチュラルに尊大な態度をとっているのも貴人として普段から下々を使うことに慣れていたのかもしれません。………それにしても『貴人とその妻に対して用いた敬称』ということは旦那がいるんですねぇ…こんな恐ろしい女の旦那ってどんな男なんでしょうか、もしかして子供もいたのかも…?

しかし、そう考えると綾と絹は京都の名家の出であり、吹雪御前も根の国の名家の出(たぶん)なので火と根の貴族同士の争いという側面もあったのかもしれませんね。

さらに吹雪御前の風貌ですが、公式ガイドブックの設定画を眺めてみると怖い顔ではありますが、なかなか整った顔立ちをしているように思います。

吹雪御前はプレイヤーが戦えない根の将軍ではありますが、こうやって振り返ってみると戦ってみたかったですねぇ、『全体版の凍竜』なんていう反則技を使ってきそうではありますが。

では、ここまでの考察をまとめてみて、吹雪御前とはどのような人物であるか振り返りたいと思います。

 

 

 

  • 主人公の父親、ヒロインの両親を殺害し、主人公たちも一瞬で戦闘不能にした戦果と戦闘力の持ち主
  • 歴戦の火の勇者でも対応できなかった術のキレ味と極めて高い変身能力
  • 残虐な根の一族の中でもトップクラスの残虐性
  • 優秀な指揮官でもある
  • 根の一族では貴族階級に属すると思われる貴人
  • それなりに顔立ちも良い
  • 結婚している(たぶん)

 

 

 

 

す、すげぇ

 

 

 

 

30年目の吹雪御前最強説 完

 

 

 

こんなに残虐な敵でも最後には生き返ってめでたしめでたしで終わるのが天外魔境Ⅱの良い所ですね。

 

 

 

 

参考文献

コンプコレクションスペシャル 天外魔境Ⅱ卍MARU公式ガイドブック PCエンジン編集部 株式会社角川書店 1992年

金田一京介 新明解国語辞典 第五版 2002年

 

参考・引用ウェブサイト

歴戦の記録 http://www.reilou.sakura.ne.jp/tengai/index.shtml