火星から来たデビルガール

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デビルガールの後ろに映るロボットのずんぐりむっくり具合を見よ!


今日、久しぶりに映画を観たのですが、大変面白い映画でしたので久々にブログを更新してみました。その映画とは1954年のイギリス映画『火星から来たデビルガール』です。

この映画は、最低映画館の館長であられる岸田裁月さんが紹介されていて、以前から興味はあったのですが、DVDが安く売られていたこともあり、この度視聴することになりました。(岸田さんは本当に魅力的な文章を書かれる方でして、本作以外にも大傑作ホラーである「悪い種子」も岸田さんの影響で観たことがあります。)

www.madisons.jp

この映画の魅力は岸田さんが全て解説してしまっている気もしますが、大変面白い映画でありましたので、生意気にも私もレビューに挑戦してみようとキーボードを叩いている次第であります。

映画の舞台はイギリスはスコットランド。シーズンオフの宿屋が舞台となっており、宿のスタッフ、宿泊客、たまたま通りかかった教授と新聞記者が和気藹々としているところに脱獄囚がやってくる。実はこの脱獄囚、スタッフの一人である女とデキており、その女がなんとかして匿おうとするのだが、新聞記者は仕事柄、脱獄囚の顔を覚えており脱獄囚の正体がバレてしまう。当然、宿屋にいる人間全てに緊張が走り、すわ如何なる!?と思っていると唐突に空飛ぶ円盤がやってきた!

岸田さんが言われているように『唐突な宇宙船の登場ですべてがうっちゃられてしまう。』のだった。

空飛ぶ円盤の中からは火星からやって来たというデビルガールが登場。(高飛車でイヤな性格をしているんだけど、スタイル抜群で美人。といっても30代後半くらいのオバチャンに見えるが…)

このデビルガールと宿屋の人々の接触で話は進んでいくのだが…

まず、デビルガールがなぜ地球にやって来たかと言うとデビルガール曰く、火星では男と女の最終戦争があり、女が勝利した。その過程で男の出生率はどんどん下がり、火星人全体が存続の危機に瀕しているとのこと。そのため地球の健康なオスを捕獲して種族繁栄の研究に役立てようとのことだった。

宇宙で男と女の最終戦争があったってワシが観とるのはマクロスか!?と言いたくなるのだが(デビルガールの前で地球の男と女がキスを見せつけるシーンもあるのだよ。)、当然そんな無茶な要求を地球人側も受け入れられないので、教授を中心にデビルガールを撃退する方法を検討するのだけど、ここが本作の爆笑ポイント。

地球人がヒソヒソと作戦会議をしていると毎回『話は聞かせてもらったぞ!』ってな感じでデビルガールがやってくるのだよ、徒歩で。火星人なんだからテレポートとか使えねぇのかよ?と思っていると中盤で一回だけテレポートを使うのだが、その後はまた徒歩で宇宙船と宿屋の間を行ったり来たりするデビルガール。岸田さんが言われるように「あっ、また来た!」とツッコむこと確実である。

しかも、地球人がいまいち火星の科学力の高さを分かっていないと察したデビルガールは自信満々で使役している二足歩行ロボットを地球人どもに披露するのだが、そのロボットというのが、冷蔵庫型のレトロ極まるずんぐりむっくりな見た目であり、転ばないようにゆっくりと宇宙船から降りてくる姿にはほのぼのすること請け合いである。(このロボットには強力な兵器が搭載されており、確かに恐ろしいことは恐ろしいのだが、見た目があんまりにもレトロなので、ふふん、どうでぇスゲェだろと自慢げな表情を見せるデビルガールがマヌケにみえる。)

こう書いてしまうと本作はギャグ調の作品に思えてしまうかもしれないが、物語自体は異星からの侵略者の恐怖を至って真剣かつ深刻に表現している。真剣にやっているからこそ作品全体にユーモアが漂っているのだよ。狙っていない笑いというか、天然の笑いがこの作品には存在しているのだ。(デビルガールが徒歩で行ったり来たりする様をギャグ調に撮っていたらたぶんスベってしまい、大して面白くないだろう。)

宇宙人が徒歩でやってくる。それだけで妙な笑いが込み上げてくる不思議な映画でありました。DVDのパッケージにはエド・ウッドを越える珍作?なんてことが書いてありますが、徒歩要素を抜きにしても76分という時間の中で手堅くまとめられた佳作であることは間違いない。意外と特撮も頑張っており、空飛ぶ円盤の着陸シーンはなかなか迫力がある。

最後に岸田さんが言われているように本作は女王様マニアは必見である。デビルガールはやや年増に見えるもののスタイル抜群の美人であり、常にクールな表情を崩さず、自らの科学力を誇ってみせる時だけニヤリと笑うのであり、そういうのが好きな人にとってはこのデビルガールは最高の存在だろう。

以上、岸田さんを意識した文章を心掛けてみました。