天外魔境ZEROを終えての感想。

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 天外魔境ZEROをクリアしました。プレイしていく中で色々と感じた点がありましたので良い点、気になった点を書き連ねていきたいと思います。

 まずは良かった点から…

 

1.視覚的な楽しさ。

本作は戦闘場面が、プレイヤーがキャラクター達を後方から見ている視点となっており(所謂TPSのような感じ)、ZIRIAや卍MARUと比べてキャラクター達が今何をしているのか、視覚的に分かりやすく情報量も多くなっています。攻撃だけでなく、眠りや石化の攻撃を受けた時、逃走する時などキャラクターごとで表現が異なり、これがキャラクターの個性となっています。また、メニュー画面を開くと各キャラクターの全身像が表示され、最終盤においては最強装備でのグラフィックに変更されるなど、プレイヤーがキャラクターの視覚的個性を常に把握できるようになり、それがキャラクターへの愛着に繋がるようになっているのはそれまでのシリーズには無かった素晴らしい点だと思います。

 

2.魅力的な仲間たち

テンジンとみずきは元々は敵対する関係ではあったが、紆余曲折あった末に愛し合うようになる……のだが、みずきの姉ジュリの呪いによりテンジンの肉体にみずきも同居し、しかも互いの存在は認識できないという『すぐ傍にいながら絶対に会うことが出来ない』悲劇的な関係は非常に印象的。特に高天原で一時的とはいえ両者が顔を合わせるイベントは本作最大の名シーンだと思います。ちなみにみずきが圧倒的に強くて、テンジンはみずき加入後ほぼ使われないというのが多いようです。たしかにみずきは火力が高くボス戦、雑魚戦共に大活躍することもあって、自分もみずきを使用することがほとんどでしたが、ラスボスであるニニギ戦においてはヒガンの竜神斬りに攻撃を集中させる目的でテンジンに月うつしを使用させてサポート役として活躍させましたので、そこまでテンジンが不遇というわけではないと思います。(とはいえ高火力な奥義揃いのみずきに対してテンジンの奥義はクセが強すぎて使い道に困るというのが正直なところ…)

ヒスイとスバルは最初に仲間になる妖精ですが、二人とも個性がはっきり分かれており、特にスバルは台詞が無いヒガンの代わりと言わんばかりに様々な台詞、感情を表現してくれます、デザインも相まって非常に可愛らしいですね。

 

3.ストレスのない良好なゲームバランス

RPGとしては難し過ぎず、簡単過ぎずの丁度良い難易度でまとまっており、遊びやすいゲームだと思います。ボリュームに関しても私がプレイした限りではやや不足しているかなと思いましたが、これは私がレトロフリークでプレイした影響でPLGシステムを使用したお遊び要素が一切経験出来なかったからであり、PLGシステムで遊びながら本編も進めるというプレイスタイルであれば、丁度良いボリュームであったと思われます。

 

 

続いて気になった点を…

1.独特なネーミングセンス

これは特に巻物で顕著なのですが、名前の付け方には頭を捻らざる得ないものがあります。攻撃系の巻物はごく普通なのですが、補助回復系となると全裸、頓間、元気、盛盛、一発、平気、良悪……等々これはどういうセンスなのだろうと?マークが頭上に浮かんでしまいます。天外魔境には若草、息吹、有明、石蛇、火蛇、金剛、清水、泥虫、力王といった独自のネーミングが確立されているのですから、それを活用すれば良かったのでは?勿論、SFCという幅広いプレイヤー層に向けたゲームですから、分かりやすい名前である必要性は理解できますが、だからと言ってもう少しどうにかなったのではと思ってしまいます。

また、みずきの強力な奥義である「ちゃぶ台返し」ですが、初見では非常にインパクトがあり、女性のみずきがこんな技を使うというギャップが面白くて良い要素だと思うのですが、これが何度も観ていると正直、飽きるというか状況にそぐわないというか…最後の決戦であるニニギ戦においても専用のBGMと共にちゃぶ台がひっくり返される様子を見せられるのはどうにも雰囲気を壊していると思いました。

 

2.大味な戦闘システム

敵との戦闘、特にボス戦が大味であり、変化に乏しいものがあります。基本的に本作のボス戦は敵味方の行動順がほぼ固定されており、敵の行動⇒味方全員の行動⇒敵の行動⇒味方全員の行動……と決まったパターンが繰り返され、こちらの行動に敵が割り込んでくるようなこともありません。そのため残り体力にさえ注意して回復を行えば負ける心配はまず無くなります。それに加えて強力な回復アイテムが序盤から大量に所持できるのが、大味さに拍車をかけています。

さらに終盤になるとこちらも強力な技を使えるようになるのですが、これがまた大味さを際立てていまして『ヒガン:竜神斬り⇒みずき:ちゃぶ台返し⇒スバル:一発を全体使用』というパターンを繰り返せば、確実に回復が間に合ってほぼノーリスクでボスを倒すことが出来ます。一応、これらの奥義には体力が大幅に減るというリスクはあるのですが、前述したように確実に回復が間に合いますし、回復役のスバルに技減少、回復の装備品を付けていれば、技が尽きる心配もありません。

ラスボスであるニニギですらこのパターンが通用してしまうのですから、ボス戦の緊張感の無さというのはちょっと気になりました。個人的にはこれが本作最大の問題点だと思います。

 

3.エンカウント率の高さとパターンの単調さ

天外魔境ZEROは比較的エンカウント率が高いゲームですが、それ自体は悪いことではないと思います。戦闘のテンポが良いので一戦闘がすぐ終わりますし、段が上がりやすいこともあって経験値稼ぎの作業が必要ないという利点があります。ただ、ZEROの場合エンカウント率が高いことに加えてエンカウントする間隔もほぼ一定のように感じました。

このエンカウント率の高さとパターンの単調さが掛け合わされると移動や雑魚戦の作業感が非常に高くなっているように感じます。また、段が上がっても敵から受けるダメージは終始大きいこともあって『すぐ敵とエンカウントする⇒毎回結構なダメージを受ける⇒戦闘終了後、回復アイテムを使用⇒すぐ敵とエンカウントする』…という流れが繰り返されてしまい、これも作業感を高める一因となっています。

 

4.便利過ぎるアイテムと不遇な巻物

本作はかなりアイテムが強力なゲームだと思います。特に体・技を回復するアイテムが非常に充実しており、序盤から強力な回復アイテムを使用することが出来ます。さらにゲームの仕様としてアイテムは99個まで所持することが可能で、しかも体・技を回復するアイテムは複数種類用意されています。体30回復の「まんじゅう」と体50回復の「がまの油」を序盤からそれぞれ99個所持することが出来るので戦闘中はともかく移動中の体力の心配はほぼありません。しかも、敵から手に入る金は多く、アイテムの値段が安いということもあって金の心配すらありません。

さらに中盤になると体200回復という強力なアイテムである「かいふく丸」がこれまた安価で入手できるようになります。このかいふく丸が本当に便利でして終盤まで回復アイテムはこれ一つで事足ります。これがどういう意味を持つかというと回復の巻物を使用する必要がほぼ無くなります。流石に最終盤ともなれば最強の回復巻物「一発」の方に軍配が上がりますが、とにかく回復アイテムが強力かつ便利過ぎます。ボスの行動を見てから、かいふく丸を使えば負ける心配はほぼ無くなるのですから(しかも、アイテムが無くなる心配もほぼない)、ボス戦の緊張感も失われるというものです。

さらに回復系に限らず、巻物は全体的に不遇な扱いを受けているように感じます。攻撃系の巻物は中盤までなら雑魚散しに使えるのですが、補助系の巻物はあまり使い勝手が良いとは思えません。そもそも補助の効果がいつ切れたのか何の表示も無く、効果がどのくらい発揮されているのか分かりにくいこともあってあまり補助巻物を使用する気になりません。また、天外シリーズは伝統的に素早さが重要ですのでとりあえず素早さを上げる巻物を使ってみよう……とした結果、ヒガンやみずきのようなメインアタッカーが敵より先に行動順が来てしまい、本来なら『体は減るが強力な攻撃⇒他のキャラで回復⇒敵の攻撃』という安全な行動が、『体は減るが強力な攻撃⇒敵の攻撃⇒他のキャラで回復』という順に入れ替わってしまい逆に危険なことになってしまいます。

さらに終盤になれば補助を掛けるよりも前述した竜神斬り・ちゃぶ台返し・一発全体かけというコンボをどんどん仕掛けた方が戦闘が早く終わるので、なおのこと補助系の巻物の出番がありません。

(ただし、このアイテムが99個まで所持できるという仕様はRPG全体で見た場合それほど珍しいことではなく、FF6クロノ・トリガーといった同時期の有名作品でも採用されています。そちらの視点からすればアイテムが一人6個程度しか持てないⅡやカブキ伝の方が不親切ということになると思われます。ただ、自分の場合どうしてもⅡが基準になってしまうのでZEROの便利過ぎるアイテムが気になりました。)

 

 

…と良い点、気になる点、合わせてこんなところでしょうか。色々言ってしまいましたが、RPGとしてとても良く出来た作品だと思いますし、何よりZEROもまた天外魔境シリーズの一員である、ということはプレイして実感できました。正直、Ⅱ以外のシリーズは多少食わず嫌いだったところもあるのですが、プレイして本当に良かったなぁと実感しています。

さぁ!次は第四の黙示録だ!