蒼き流星SPTレイズナー 20話『レイズナーの怒り』

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地球側によるレイズナーの調査が始まっています。地球人にすればグラドスという脅威が迫っている以上、それに対抗するためにもエイジが持ち込んだグラドス兵器の調査は急務であり、やむを得ないことであるとは思います。しかし、それならそれでエイジに協力を依頼して、調査を進めるとか穏便な方法があるとは思うのですが、この時点でエイジは所詮『保菌者』に過ぎないのでしょうか…

しかし、エイジと視聴者はレイズナーには自己防衛のための隠されたプログラムが潜んでいることを知っていますので、地球側の強引な調査は観ていて危なっかしくてたまりません。同時にエイジの身体調査も進められ、エイジの肉体は地球人と全く同じ構造であることがわかります。(これもエイジに許可を取らず無理やりやったんだろうなぁ~)

 

アーサー達は一通りの尋問が済むと解放され、自由の身となります。アーサー達は異常な体験をしてきたとはいえ、巻き込まれただけであり、それほど聴くことも無いという判断なのでしょう。ただし、エイジだけは別ですが……それに抗議するアーサー達ですが、よく考えるとエリザベスの姿がありません。エリザベスはどうしたのか、ギルバート博士に質問すると博士は「彼女は国連宇宙局を退職した。」と答えるのでした。

 

CCCのメンバーに何も告げずに一人去っていくエリザベス。アーサー達は慌てて彼女の元に駆け寄ります。エリザベスは退職後、しばらくはクレイトンと一緒に生活をするそうです。CCCのメンバーは全員エリザベスにこれまでの感謝を伝えます。思えば第一話からエリザベスは数少ない大人の生き残りとしてCCCのメンバーを率い、精神的支柱となり続けてきました。6名の固い絆が伝わってくる良いシーンだと思います。

皆、別れを惜しみつつエリザベスを見送りますが、何故かシモーヌはエリザベスを追いかけていきます。どうしてもエリザベスに聞きたいことがあるようですが、彼女が聞きたいこととは、エリザベスとクレイトンの関係についてでした。

なぜもう関係が終わっているクレイトンに寄り添おうとするのか、今のシモーヌがどうしても知りたいのは、エリザベスの持つ男性に対する複雑な想いについてなのでしょう。エリザベス曰く

 

今の私はとても疲れているわ。そして彼は傷ついている。彼の眼の傷が癒える頃には私の疲れも消えているでしょう。そうしたらきっと二人は別々に生きることになると思うわ。(ここで俯いて)でも、それまでは一緒に居たい…

 

なんというんですかね、前も言いましたが、エリザベスとクレイトンの関係は『恋』は終わっているけど、『愛』は続いているとでも言いますか、恋という自分主体の感情はもう無いけれど、愛という相手が主体の感情は続いていて傷ついたもの同士、お互いの助け合いが必要だということなのでしょうか。そして互いが独り立ちできるようになれば、別れるのみであると。(まるで尾崎紀世彦また逢う日まで、みたいな関係だ…)

シモーヌもまた自らの中にある恋と愛の感情の始末をつけることが出来ず、エリザベスに助言を求めたのでした。

シモーヌが思い悩んでいる相手こそが、エイジなのですが、悩むのも当然というべきかエイジは異星からの異邦人であり、今後エイジが地球にとってどういう意味を持つのか不明なままです。もしかしたらエイジの存在が地球にとって不幸なことになるかもしれません。そんな男に惹かれてしまった自分はどうしたらいいのか、シモーヌが悩んでいるのはそこなのでしょう。

エリザベスはシモーヌに「大事なのは結果ではなく、今の気持ちに自分が正直になること」と言葉をかけ去っていきます。去った先にはアメリカ軍の制服に身を包んだクレイトンが待っていました。これがエリザベスにとっての今の気持ちに正直になることなのでしょう。

 

それにしてもエリザベスは何故、苦楽を共にした生徒達に一言も告げずに去ろうとしたのでしょうか。これは完全に私の妄想でしかありませんが、厳しいことを言うようならエリザベスは引率者としての責任を果たせていません。無論、グラドスの侵略に対してエリザベスは無力であり、どうしようもなかったのは事実です。しかし、引率した生徒の大半が死亡したというのもまた事実です。また、同僚でもある国連職員のビル達はエリザベスの前で次々と死亡し、医師でありながら誰一人として救うことが出来ませんでした。(繰り返して言いますが、そういった悲劇に対してエリザベス個人に出来ることは何もありません。)

生徒も同僚も大半が死に絶えたことはエリザベスの心中に只事ではない無力感を与えたことでしょう。それやこれやで生徒達に対して申し訳が無く、何も言うことが出来ず、黙って立ち去ろうとしたのではないでしょうか。以上、妄想終わり。

 

エリザベスに続いてアーサーも自宅に帰るために去っていきます。生き残った彼らもこれから日常へと戻っていくのでしょうか。アーサーもまた別れを名残惜しみますが、去り際にちゃっかりシモーヌに自分の連絡先を渡すことも忘れていません。こと恋愛模様に関してはシモーヌが完全に主役ですね~(アーサーやデビットから見てエリザベスは年上過ぎるし、アンナは年下過ぎるというのもあるのでシモーヌが唯一の恋愛対象というのもあるのでしょう。そしてこういう話になると完全に蚊帳の外のロアン。)

さらにアーサーは未だ監禁されているであろうエイジに向かって

 

「ちょっと両親に会って安心させてくる、戻ってくるからなー!」

 

と声をかけてから車に乗って去っていきます。当然、エイジに聴こえるわけもありません、しかし黙って去るのも忍びないというアーサーの義理堅さと優しさが伝わってきます。レイズナーというアニメは第一話から人が死にまくり、無数の犠牲の上で少数の少年少女たちだけが生き残るという冷静に考えると非常に暗く、陰鬱な話なのですが、アーサーのお人好しで毒にも薬にもならない人間性は、良い感じにその陰鬱さを軽減させてくれていると思います。

続いてシモーヌにも迎えが来ますが、それが執事が高級車で直々に迎えに来ており、予想はしていましたが、シモーヌの家は相当な名家かつ資産家のようです。しかし、シモーヌは迎えを拒否し、もう少しここに留まることを宣言します。彼女にはやることがあるからなのでしょう、『彼』に自分の想いを伝えるという大事が…

 

場面は再び地球人のレイズナー調査へ。レイズナーの調査が着々と進みますが、なぜかレイズナーのコンピューターの一部領域は画像に映りません。おそらく外部からの調査に対する秘匿機能が働いていると思われますので、地球人たちはレイズナーを物理的に解体して調査しようとします。しかし、これまで観てきてわかるようにレイズナーには強力な自己防衛システムが組み込まれていますので、こんな無茶をしたらマズいはずですが…

と、エイジと視聴者の心配はバッチリ的中しましてレイズナー無人のまま動き出し、逃走しようとします。それをよせばいいのに米軍は戦車や戦闘ヘリ、しまいにはガンシップAC-130まで繰り出してレイズナーを破壊しようとします。(それにしてもAC-130の内部映像が描かれていますが、85年当時にこういった航空機の内部資料が公開されていたんですかね?)

しかし、当然レイズナーにかなうはずもなく米軍は一方的に撃破されていきます。このシーンだけでおそらく地球人側に数十名は死者が出ていると思われます。レイズナーとは決して『正義の味方』などではなく、自己防衛を全てに優先する冷酷なプログラムでしかないことがよく分かるシーンです。

果たしてレイズナーの存在は地球にとって吉と出るか凶と出るか、そんな不安さをまき散らした一話でした。