蒼き流星SPTレイズナー 第17話『群がる殺人機(マシーン)』

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今話の主役である無人機スカルガンナー 
画像は蒼き流星SPTレイズナー公式ウェブサイトより。



 

今話は無人戦闘メカ(TS=テラーストライカーと呼ばれる)『スカルガンナー』とエイジ達の激戦が描かれているのですが、なんといっても今話の一番の注目ポイントは常軌を逸したと言っても過言ではないレベルの作画にあるでしょう。

これに関してはこんなわけのわからんブログで伝えきれるわけもなく、実際に本編を視聴していただくのが一番なのですが、毎週放送というスケジュールの作品において何故ここまでレベルの高い仕事が可能なのか、ただただプロフェッショナルの凄まじさに驚くばかりです。

そして何より重要なのが、その凄まじいまでの作画が、きちんと世界観と繋がっているということです。こんなことを言うのもなんですが、私はアニメにおいて作画が優れているというのはそこまで重要では無いと思っています。

視聴者は別にアニメーターの仕事を見学するためにアニメを観ているわけではありません。アニメーションというシナリオがあって、キャラクターがあって、声優の演技があって、音楽があって成立している作品を観ているのであって、作画はそのうちの要素の一つに過ぎません。極端なことをいえば作画がどれだけ優れていようが、その優れた作画を持ってしてその作品の世界観を説明出来ていなければ意味が無いと思います。

その点で今話のレイズナーは完璧といえますね、狙ってこの作画をこの話に持ってきたかどうかは不明ですが、無人機スカルガンナーの不気味さ、そしてその後ろにあるグラドスの侵略計画の恐ろしさが今話の作画において存分に表現されていると思います

 

これがスカルガンナーのコンセプトだそうです。ちなみにゴキブリをモチーフにしているのだとか、確かにゴキブリ並みのしつこさと気持ち悪さで襲ってくるぞ!
高橋良輔著 アニメ監督で…いいのかな?」より画像引用

 

とにかく今話の作画はアニメに興味のある人なら是非とも一度は観て欲しいですね。個人的な注目ポイントとしては『シャトルから飛び出して奇襲をかけるバルディの躍動感』『バルディのショルダーレーザー砲の水飛沫のような独特のエフェクト』『スカルガンナーを迎え撃つために小ジャンプで手前に移動するベイブル』『機関砲の掃射後に地面に落ちる薬莢』『無人機であるので有人機では困難な挙動で迫るスカルガンナー』……まだまだありますが、こんなところでしょうか。何度も言いますが、アニメに少しでも興味のある人は是非視聴して欲しいです。

 

そしてもう一つ、今話で目が離せないのはエリザベスとクレイトンの関係でしょう。

この二人の恋愛関係は終了しているとはいえ、互いのことが嫌いなわけではない、いやむしろ今でも二人の間に愛は存在していることは察せられます。しかし、二人にとって決定的であったのは『生き方・価値観』が異なってしまったことなのでしょう。生き残るためには武器を獲れと子供たちにも戦わせようとする軍人クレイトン、そういう戦闘的な考えが侵略者に付け入る隙を与えるのだと抗議する国連職員エリザベス、どちらが間違っているという事でもなく、まさしく二人は過去はともかく現在において生き方が異なってしまっていることが伝わってきます。

クレイトンは軍人として、エリザベスは国連職員としての道を歩みだしており、今更生き方、価値観を変えることなど出来ず、破局は止むを得ないことなのでしょう。二人のすれ違うやり取りが、未来の象徴ともいうべき子供達の前で行われていることは印象的です。

しかし、言い換えてしまえば二人は生き方と価値観が違うだけで、互いを思いやる心は全く失われていないことも伝わってきます。先の話になりますが、でなければ危険を冒して薬を取りに行ったり、互いの傷(体も心も)が癒えるまで共に暮らすことを決意するわけがありません。

ボトムズのキリコとフィアナもそうでしたが、直接的な言葉(好きだ、愛している、とか)や行動(抱きしめ合う、キスをするなど)を取らずとも男女の恋愛模様を表現することが出来る、これは高橋良輔監督作品に共通する素晴らしい点だと思います。(クレイトンがエリザベスにキスをしようとするが、エリザベスはそれとなく拒否してしまうシーンもあります。まぁ子供たちが見ているってのもあるんでしょうが、笑)

まぁそういう小難しい話は抜きにしても未練がかなりあるクレイトンともう済んだことと割り切っているエリザベスの二人を観ているだけで楽しいです、そしてその二人を眺めている子供たちの「何やっているんだろう、この大人たちは…」とでも言いたげな表情も、笑

 

やはり脇役というのは本当に大事だなぁ、と思う一話でありました。