蒼き流星SPTレイズナー第4話 『心のこしての脱出』

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レイズナーの第四話を視聴したので感想です。

トライポッド・キャリアに一時撤退するゴステロ隊。ゴステロはスイッチの保護カバーを意味なくパカパカと開閉させ続けています。人間、イライラしているとこういう意味のない行為をしてしまいますよね。

そこに部下のロベリアが登場し、作戦の経過を本部に報告しようとしますが、ゴステロはその必要は無いと止めさせます。報告の義務があると抗弁するロベリアですが、結局はゴステロに押し切られます。このロベリアですが、初登場のこの時点から真っ当な軍人として描かれており、それが今後の展開にも影響してきます。

それにしても義務付けられた報告を無視するとは、上官に露見した場合、ゴステロはどう言い繕うつもりなのでしょうか…?

観測施設の様な場所に避難した国連職員とCCCのメンバーは今後の行動について話し合います。アメリカ軍基地に向かうこと自体は決定していますが、この一行は非武装であり、必ず再度襲撃してくるグラドス軍SPTに対してはあまりに無力です。そうなると頼りとなるのはエイジのレイズナーしかありません。それもあってか、メンバーの中に徐々にエイジを信じてもいいのでは…?という雰囲気が醸成されてきており、エイジにばかり守られていることに申し訳なさを感じるようになっています。尤もデビッドだけはエイジを一切信用していませんが…

観測施設から地球人たちが脱出した後、エイジはまだ彼らが施設内に滞在してみえるように細工した後、ゴステロ達の襲撃を待ち構えます。ゴステロの部下は施設にミサイルを撃ち込んで一気に勝負をつけることを提案しますが、地球人たちをなぶり殺しにしたいゴステロはそれを却下します。ここでもゴステロは作戦の合理性より、自らの加虐心を満足させる方を優先させます。本当に指揮官の素質として問題大ありです…

施設内部に逃げ込んだレイズナーを追いかけてゴステロの部下、ガステンが迫ります。と、ここでレイズナーはガステンのブレイバーのバランスが崩れた隙を突いてナックルショットで奇襲をかけます。

このナックルショット、マニピュレーター(拳)を専用のナックルカバーで覆って殴りつける格闘兵器ですが、装甲騎兵ボトムズに登場するアームパンチの系譜にある高橋監督作品ではお馴染みの兵器ですね。

余談ですが、高橋監督作品に登場する戦闘ロボット達は専用の格闘兵器のようなものはほとんど装備していません。つまりビームサーベル的な格闘にしか使えない兵器の有無ということですね。ダグラムのコンバット・アーマーは格闘が必要な場合はマニピュレーターで直接殴りかかっていましたし、前述したボトムズのアーマードトルーパーはマニュピレーターを炸薬の力で打ち出すアームパンチで格闘する他、腕部に外付けされた鉤爪で格闘していましたガサラキタクティカルアーマーに至ってはそもそも格闘を想定していないと思われます。

ボトムズで一部の機体しか装備していないパイルバンカー、ファンタジー色が強いガリアンを除けば、不思議と格闘専用兵器が少ないのが高橋監督作品の特徴です。高橋監督は著書において

 

ロボット、それも人型の戦闘兵器だ。白兵戦は避けがたい。だが、従来のロボットアクションシーンはまるで『あしたのジョー』の戦いのようで、あたしらにはメカ臭い感じがしなかったのだ。たとえシルエットは人型でも、その機能はあくまでもメカのそれでなければいけないというのがあたしらの信条だ。

              

             高橋良輔著 『アニメ監督でいいのかな?』より引用。

 

と述べられております。つまりロボットが、剣や槍を振うのでは、それは人間がただ巨大化しただけに過ぎず、ロボット=メカニカルである必要性が無いということなのでしょう。こういう何故二足歩行ロボットで無いといけないのか?二足歩行ロボットに説得力を与えるためにはどうしたらいいのか?について考え続けているのが、高橋監督作品の魅力ですね。付け加えるとして個人的な意見としては、たとえロボット同士が接近して戦うにしても銃を使えばいいじゃないか、という普通の疑問もあったのではないかと思います。接近した、じゃあ格闘武器だ!ということでよっこらしょと剣や槍を取り出す余裕があるなら、そのまま射撃を続けた方が良いに決まっています。なので、高橋監督作品のロボットの格闘武器は『構える』という行為を必要としないものが、ほとんどです。つまり、射撃からそのままの流れで格闘攻撃を繰り出せる兵器が多いということです。これは人間が、ライフルに銃剣を取り付けて射撃後、すぐに格闘に移れるようにしているのと同じですね。

 

話が大分逸れましたが、エイジのナックルショットによる奇襲は成功し、ガステンのブレイバーは装甲に大ダメージを受け、コクピット部が開放されてしまいます。そこに銃を突き付けてガステンを人質にとったエイジは、ガステンから通話コードの周波数を聞き出してゴステロに部下を人質に取った旨を突きつけます。

ここでエイジが何気なく、ガステンから周波数を聞いてから、敵であるゴステロと初めて通話していますが、これって非常に重要な描写だと思います。つまり、周波数が分からなければ通信に割り込むことは不可能であるとハッキリ表現しているのです。

そんなの当たり前なのでは………と思ってしまいそうですが、ロボットアニメの世界においてこれは当たり前ではありません。特に作品名は出しませんが、敵と味方が、当たり前のように無線で会話をしているシーンが散見されます。(それも作戦行動中に!私語を!)

私はああいうシーンを見る度にこいつらの通信は秘匿化されていねぇのかよ、盗聴し放題じゃん…と思っていました。細かいことかもしれませんが、こういう点を雑にしていると作品全体の緊張感に影響してくると思います。

ちなみにボトムズでも通信に関するエピソードが一つありまして、第二部のクメン編でキリコがフィアナが乗っていると思い込んでいた(実際にはイプシロン乗機)ATと通信を行うためにカメラのライトを点滅させることでメッセージを送ろうとしたシーンがありました、つまりは一種のモールス信号ですね。(ライトの点滅回数、長さで言語を表現している。)これも敵と味方はいきなり通信出来ないという当たり前のことを表現したシーンでしょうね。本当にこういう細かい描写って重要だと思います。

ガステンを人質にとったエイジですが、視聴者からしても当然というか何というか、ゴステロは一切ガステンのことを心配せず、逆にエイジを脅しかけます。困惑したエイジはとりあえずブレイバーからチューブを引き出し、それをレイズナーに接続してレイズナーにエネルギーを補給します。僚機同士でエネルギーの共有が出来るんですね。SPTは主装備であるレーザードライフルもSPT本体のエネルギーに依存しているようなので僚機とエネルギーを共有できることは継戦能力に影響してきますね、良いメカ描写です。現実の軍隊が基本的に使用する銃弾の種類を統一していると同じものを感じます。(そうすれば仲間内で銃弾を共有することが可能になる。)

結局エイジはガステンを撃つことが出来ず、ゴステロの脅しに屈します。曰く、同じグラドスの血が流れている人を殺すことは出来ないと…

ゴステロはミサイルを撃ち込んでガステンもろとも始末しようとしますが、エイジはレイズナーでガステンのブレイバーに覆いかぶさり彼を守ります。この辺りの描写はガサラキのユウシロウを思わせますね…(暴走した実験TAパイロットを助けた話。)

そしてガステンはエイジに命を救われた恩義を感じ、ゴステロに発砲し、エイジを助けます。しかし、ガステンのブレイバーは既にレーザードライフル一発を撃つだけのエネルギーしかなく、そのまま身動きすら出来ず、ゴステロの反撃を受けてガステンは殺害されます…(エイジがブレイバーのエネルギーを奪っていなかったらと思いそうになりますが、レイズナーもエネルギーに余裕はありませんでしたし、そもそもまさかゴステロが部下を殺すほど非道な人間だと思っていなかったので、これは止むを得ないでしょう。)

初めて現れたグラドス人の理解者ともいえるガステンを失ったエイジ。しかし、彼の存在はグラドス人の全てがゴステロの様な人間では無いと証明するものでした。

 

余談…それにしてもゴステロは部下殺しを行ったわけですが、あれだけ高性能な機械であるSPTですから、当然戦闘記録は保存されているでしょうし、音声データも同様でしょう。当然、帰還後には上官に戦闘報告書の類を提出が求められると思いますが、これらのデータをどうやって誤魔化すつもりなのでしょうか?改竄でもするのか、ゴステロ自身が上官に取り入っていて有耶無耶にできるのか…細かい疑問かもしれませんが、このレイズナーというアニメ本当によく出来ていて、大変真面目に作られた作品だと思います。だからこそこのような細かい疑問が気になってしまうともいえます。勿論、こういう細かい部分ばかり引っ掛かって柔軟なシナリオ展開が出来なくなれば本末転倒ですので、この程度は流してもいいというのは分かります。