蒼き流星SPTレイズナー 第3話『その瞳を信じて』

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レイズナーの第三話を視聴したので感想です。

エイジを見逃したことを司令官のグレスコと副官のズールから詰問されるゲイル。ゲイルは抗弁するもグレスコの命によって身柄を拘束されてしまいますが、任務を勝手に放棄して帰還してきたのですから、これは仕方がないでしょう。

妙に人気があるゴステロが初登場。しかし、個人的にはこのゴステロというキャラクターはあまり好きになれません。ゴステロってちょっとマンガ的過ぎるというか、リアリティに対して個性が過ぎるというか。作戦の合理性より自らの加虐心を満足させることを優先させることといい、部下殺しといい、大尉という軍隊におけるそれなりの重職でありながら、問題が多過ぎるように感じます。大尉がここまで問題的かつ、暴走しているのならそれ以上の上級者、つまり少佐以上の管理責任能力はどうなっているのでしょうか?グラドス軍が健全な組織であるならばゴステロの様な問題の多い人物をゲイルの後任に据えるのは不自然な気もしますが、そこはゴステロが上手く上に取り入っているのでしょうか。

レイズナーの機能を調べる国連職員たち。あまりに高性能で自分も見たことが無いような技術に対し、「どっかにメイドインジャパンと書いていないかなと思って」とギャグを飛ばす男性職員。日本が世界に向けてメイドインジャパンを輸出しまくり、貿易摩擦にまで発展したのがレイズナーの放送時期でした。今じゃもう昔話ですね…

エイジの尋問を盗み聞きし、自分達にも情報を受ける権利があると主張するアーサー。第一話から最年長者であるという意識が随所に現れていて、観ていて微笑ましく感じます。

エイジの父親は行方不明になった地球の宇宙飛行士だという話から、最初に月に行ったのはアメリカのアームストロングだと語られます。やはりレイズナーの世界は現実の我々が住む世界とリンクしているのですね。そしてエイジの口からグラドスの目的は米ソを衝突させ、その勢力の疲弊に付け入って地球を植民地化することが語られます。ということはグラドスはかなり地球に関する情報を収集し、研究していることになりますね。コンピューターやメカニクスだけでなく、こういう点でも地球はグラドスに大きく後れを取っていることが分かります。

…それにしてもこの『地球人同士の争いで疲弊したところに地球外勢力が侵略してくる。』って私の好きなスパロボ64と同じ世界観ですね。スパロボ64をプレイしたのは中学生の時、高橋監督作品に初めて触れたのは高校生の時、高橋監督を知らなかった時点で既に自分が好きな作風はこれだ!と直感していたということですね~

エイジと対面したアンナはエイジが嘘を付いていなことを感じ、エイジを釈放するように国連職員に訴えます。これを男性職員が、下ネタ交じりにアンナをからかうのですが、それを聞いたエリザベスが

私の生徒の前でそんな下品なことを言わないでください!

と毅然とした態度で怒鳴りつけます。大人です、大人です、ドクター・エリザベス。単に歳が上だというだけではなく、大人として教育者として子供たちにどう接するべきか常に真剣に考えています。こういうキャラクターが居るかどうかで作品全体の緊張感も変わってきます。やはり、西村先生にエリザベスを描いていただいて良かったです。

その後、デビッドが緊急用(?)の拳銃を手に入れて、エイジに突きつけます。ジュノが死んだ恨みをエイジにぶつけますが、銃を撃つことが出来ません。直後に国連職員にデビッドは取り押さえられますが、揉み合っている最中に暴発的に銃弾が、エイジの顔面をかすめます。そのことに驚愕するデビッド。いくらエイジが憎いといっても殺人という究極の行為にはやはり及べないようです。これはエイジにもいえることです。

我々はアクション映画や戦争映画を見慣れているので人間必要とあれば殺人行為も実行できると考えてしまいますが、実際には殺人とは非常に困難な行為です。

 

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デーブ・グロスマン著の『戦争における人殺しの心理学』によれば戦場で殺人行為を実行できるのは全体の二割に過ぎず、後の八割は何らかの理由をつけて(わざと敵の頭上を狙う、発砲よりも負傷者の運搬などに従事しようとする)殺人行為を回避しているとあります。

当然、これでは戦争に勝てませんから、古来から指導者たちは何とかして兵士に殺人行為を行わせるよう苦慮してきました。その方法はいくつかありますが、そのうちの一つに「敵を侮辱、侮蔑」することが効果的とされています。第一次、第二次世界大戦において連合国兵はドイツ兵の事を「クラウト(キャベツのこと、ドイツ人がザワークラウトを好むことから)」と呼び、アメリカ兵は「ヤンキー」、イギリス兵は「トミー」と呼ばれ、またアジア人全体を侮蔑した呼び方に「グーク」というのもありました。

このように敵対する勢力を侮蔑化することで「そんな奴らなら殺しても痛痒を感じない。」と思い込ませることで兵士に容易に殺人を実行させようとする…という何とも気が重くなるエピソードがあります、というか今でも似たようなことは世界中で行われているでしょう。

話が逸れましたが、グラドス人達も地球人たちを完全に見下しており、「毛の抜けたサル」呼ばわりしています。そのグラドスの極端な形がゴステロなのでしょう。

エイジに関してはグラドスと地球の両方にアイデンティティがあり、博愛主義の様な面もあるので殺人を拒否するのも当然といえば当然でしょう。ましてやデビッドはそのような訓練の経験も習慣もありませんし、殺意は抱いてもそれを実行に移せないのも当然でしょう。

ゴステロ達が急襲してきますが、レイズナーはエイジが拘禁されていたため、電源が長時間オフになっていた影響で駆動部が凍結してしまい、すぐに動き出すことが出来ません。火星の平均気温は氷点下50℃以下ですから、環境を上手くメカ描写に活かしていますね。

追い詰められた地球人たちは核施設の核ミサイル(?)を核爆発させることでゴステロ達を倒そうとします。なんとか核爆発を引き起こし、自分達は危害範囲外に脱出することは出来ましたが、ゴステロたちSPTには大したダメージを与えられていません。核という人間にとって究極ともいえる兵器をもってしても倒せないとは、SPTは人類の科学力を遥かに超えていますね…

しかし、核爆発で倒すことは出来ずとも、隙をついてエイジが銃を突きつけ、ゴステロを撤退させます。ここでゴステロを殺せていれば後の悲劇は無かったのですが、それがエイジにはできないのは前述したとおりです。(私の勝手な想像ですが…)

さて、三話にして徐々に話が進みつつあります。次は…